マカオ新交通システム、必要ない人の優先席占用を罰金対象に

目下、マカオ初となる軌道系大量輸送機関「マカオ新交通システム(LRT)」第一期の建設工事が進められており、2019年にもタイパ線(9.3km、11駅)が先行開業する見通しとなっている。

開業時期が近づく中、マカオ政府は今年(2017年)2月中旬から4月13日にかけて、LRTの管理運営、運営者責任・義務、乗客及び公衆の責任・義務、乗車券及び運賃制度等を含む「LRT法案」について、パブリックコメント(意見公募手続き)を実施している。

乗客の義務の中で、無賃乗車、盲導犬以外の動物の持ち込み、騒音や他人へ迷惑をかける行為などが罰金を伴う違反例として挙げられているが、「障がい者、高齢者、妊婦、赤ちゃんを抱っこした人のための優先席を占用(明確に席を譲る状況ではないとわかる場合を除く)」した場合も違反となり、400〜5000パタカ(日本円換算:約5700〜7万1000円)の罰金が科せられるとされ、物議を醸している。

現在、公共路線バスがマカオの主要な公共交通機関となっているが、優先席の利用に関して罰則はない。バスを利用するにあたり、席を必要とする乗客がいた場合、優先席に限らずどの席に座っていても、速やかに席を譲るのが「常識」として定着していることもあり、罰金という圧力をかけるやり方ではなく、常日頃からの道徳教育を通じてマカオの良さである譲り合いの精神を継承、拡大していくべきと考える人が多いためだ。

「罰」とされることで、優先席利用対象とされた人たちが「特権的」であると感じられ、その他の乗客との間で対立関係が形成されてしまうことや、例えば、外見上で障がいがあるとわかりにくい人、お腹の大きさが目立たない妊娠初期の女性、体調不良で気分がすぐれない人などが優先席を利用しにくくなることも危惧される。

マカオLRT第1期プロジェクトは、マカオ半島北部の關閘から外港フェリーターミナル、新口岸、南灣湖を経由して媽閣に至るマカオ半島線、媽閣から西灣大橋を経てタイパ島に入り、大型IR(統合型リゾート)が建ち並ぶコタイ地区を通ってマカオ国際空港、タイパフェリーターミナルに至るタイパ線の2線、21駅、21キロメートルで構成される。

同プロジェクトは、国際入札を経て日本の三菱重工と伊藤忠商事の共同体が駅舎と土木工事を除くLRTシステム一式を46億8800万パタカ(日本円換算:約667億円)で受注しており、マカオの公共工事として日本企業が獲得した最大規模の案件としても注目されている。東京の「ゆりかもめ」と同タイプ(クリスタルムーバー型)の日本製の鉄道車輌がマカオの街を走る予定。

広島県の三菱重工三原製作所で走行試験を行うマカオLRT車輌(資料)=2014年4月(写真:GIT)

広島県の三菱重工三原製作所で走行試験を行うマカオLRT車輌(資料)=2014年4月(写真:GIT)

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  アフターコロナ初年となったマカオの昨年(2023年)通期のカジノ売上(粗収益、Gross Gam…
  2.  マカオ・コタイ地区にある統合型リゾート(IR)ギャラクシーマカオのイーストスクエアで4月24日、…
  3.  マカオ治安警察局は4月24日、同月22日に路線バスの車内で乗り合わせていた20代の女性の臀部に下…
  4.  マカオ政府旅遊局(MGTO)は4月24日、マカオ半島新口岸地区にあるマカオグランプリ博物館でレゴ…
  5.  マカオ政府衛生局は4月23日夜、マカオで「人食いバクテリア」と呼ばれる細菌のひとつ、ビブリオ・バ…

ピックアップ記事

  1.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…
  2.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…
  3.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  4.  マカオ国際空港を本拠地とするマカオ航空(NX)が福岡便の運航を(2024年)7月12日から再開す…
  5.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…

注目記事

  1.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  2.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  3.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
  4.  香港国際空港の制限エリア内にある「スカイピア」と港珠澳大橋マカオ側イミグレーション施設との間を港…
  5.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年5月号
(vol.131)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun