マカオ、新型コロナ流入阻止へ水際対策強化…隔離検疫めぐるトラブルも

 中国・湖北省武漢市での集中発生に端を発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、世界各地へ感染が拡大する中、国際観光都市として知られるマカオでも、官民の間で状況の変化に応じた各種防疫対策が講じられている。

 マカオでは、厳格な防疫対策が奏功し、2月初旬から3月中旬まで40日連続で新型コロナの新規感染確認ゼロとなり、3月6日までに患者すべてが治癒し、退院済みで、重症化、死亡、院内感染例はいずれもなかった。その後、世界的に感染が拡大する中、3月15日から17日にかけて3人の新規感染確認が相次ぎ、患者はいずれも欧州からの入境者だった。政府はこれまで中国本土からの流入、域内における感染拡大の食い止めに主眼を置く防疫対策を講じてきたが、近日は中国本土を対象とした措置も継続しながら、欧米や日韓など、中国以外からの「第二波」に対する警戒を強め、水際対策の強化を矢継ぎ早に打ち出している。

 今週に入って以降の動きでは、17日午前0時から過去14日以内に外国(中国本土・香港・台湾を除く)に滞在したすべての入境者に対して隔離下における14日間の医学観察を必須とし、18日午前からは非居民(マカオ居民IDカード保有者、中国本土・香港・台湾の居民、「ブルーカード」と呼ばれるマカオで就労許可を得た者に発給される身分証を保有者以外)の入境が禁止となった。マカオ政府衛生局では、医療資源に限りがある中、居民を優先するための選択だとし、医療崩壊を避ける意図を明かしている。

 マカオ政府新型コロナウイルス感染症対策センターは3月17日午後5時(現地時間、以下同)から定例記者会見を開催。同センターによれば、近日の水際対策の強化に絡み、入境者との間で隔離をめぐるトラブルが報告されているとのこと。

 隔離下における14日間の医学観察は政府指定場所で実施されるが、その場所については過去14日以内に滞在した国・地域によって判定され、高リスクの場合は指定ホテルに限定され、中リスクでは条件を満たした上で自宅も可とされている。目下、欧州、米州、日韓など多くの国・地域が高リスクに分類されている。(*リストは後述)

 報告のあった入境者とのトラブルは、隔離場所に関するもの。17日午前3時頃、就学先のポルトガルからタイを経由して戻った学生がマカオ国際空港へ到着した際、ポルトガルが高リスクであるため、指定ホテルでの隔離対象となったが、未成年者のため同意書に署名することができず、保護者を呼んだところ、自宅での隔離を求めて署名を拒否した上、同意書の写真を撮影し、メディアに知らせる、弁護士に意見を意見を聞くなどと主張し、3時間にわたって悶着が続いたとのこと。最終的に学生は指定ホテルへ移送され、未成年者であることから保護者の同伴も認められたという。また、同日夜には米国から戻った学生がマカオ国際空港到着時に指定ホテルでの隔離を拒否し、迎えにきた保護者が弁護士とともに制限エリアに入った上、不合理な措置だと主張して現場にいたおよそ20人の入境者に対して一緒に検疫拒否をするよう呼びかけたという。衛生当局の現場責任者が検疫措置の詳細を説明した後、保護者が帯同した弁護士が学生に対して説明に異議を唱える余地はなく、遵守することが必須であると説得し、隔離同意書にサインするに至ったとのこと。現場は数時間にわたって混乱し、多くの入境旅客、居民が空港から出られなくなる影響が出たとした。
 
 衛生当局では、隔離検疫の目的は地域社会全体、関係者やその家族の健康を保証するために実施しているもので、伝染病防止法に則って実施しており、違反者は刑事責任を追うほか、強制隔離措置の対象となると指摘。流入阻止のための有効な手段としての水際対策の重要性を理解し、政府の取り組みに協力するよう呼びかけた。

 隔離検疫の指定ホテルは、これまでコタイ地区にある「ポウサダ・マリーナ・インファンテ」だったが、収容キャパシティが埋まったため、17日からマカオ国際空港に隣接する「ゴールデン・クラウン・チャイナ」が加わり、2軒体制となった。

3月17日夜に開催されたマカオ政府新型コロナウイルス感染症対策センターによる定例記者会見(写真:マカオ政府新型コロナウイルス感染症対策センター)

 マカオ治安警察局によれば、自宅での隔離となっている人は約330人おり、抜き打ち検査などを実施しているが、これまでのところ外出したといった違反は確認されていないとのこと。今後、状況に応じて適宜パトロール員の数を調整し、自宅における隔離が正しく履行される状況を確保するとした。

 マカオ政府が17日の記者会見で明らかにした高リスク及び中リスクの国・地域リストは下記の通り。

<高リスク>
イタリア、ドイツ、フランス、スペイン、オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、スイス、英国、アイルランド、ロシア、米国、カナダ、ブラジル、オーストラリア、韓国、日本、イラン、エジプト
<中リスク>
カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、東チモール、インドネシア、フィリピン、シンガポール

 中国本土向けの措置については、14日以内に「広東省、河南省、浙江省、湖南省、安徽省、江西省、江蘇省、重慶市、山東省、四川省、黒龍江省、北京市、上海市」のいずれかに滞在した旅客が医学検査ステーションにおける医学検査の対象となっている。イミグレーション施設から市内に設けられた医学検査ステーションに移送され、医学検査を経て入境可否が判断されることになる。検査にかかる時間は約6~8時間で、検査忌避はできない。武漢市含む湖北省については、1月27日から合法医療機関が発行した医師による新型コロナウイルス未感染証明書の提出が必須化されている。

 マカオ政府は1月後半以降、一連の春節祝賀イベントやMICEイベントの中止、世界遺産含む文化施設の一時休館(3月16日から順次再開)、カジノ及びレジャー・娯楽施設の一時休業(カジノは2月5日から19日まで、レジャー・娯楽施設は同日から3月1日まで)といった観光都市としての魅力をあえて消すと同時に、中国本土及び他の高発生地区との往来を物理的に制限すること、マカオ住民に対しても全学校の休校(4月13日から5月4日にかけて順次再開見通し)や政府窓口の一時休止(3月2日から段階的に解除)を含む不要不急の外出を控えさせる策などを講じることで、流行を食い止めてきた。

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