第67回マカオグランプリが無事閉幕…コロナ禍で異例ずくめの大会、地元マカオ勢がF4トップ2独占

 マカオで年に一度開催されるモータースポーツの祭典「マカオグランプリ」。1954年にスタートした歴史ある大会で、市街地の一般道路を転用した全長6.2kmの「ギアサーキット」が舞台となる。

 今年(2020年)の第67回大会が11月22日夕方、全日程を消化して無事に閉幕した。

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行が続く中だが、マカオではコロナ封じ込めに成功し、状況は落ち着いている。ただし、水際措置の強化によって国・地域を跨ぐ移動が困難となっていること、世界のモータースポーツカレンダーに大幅変更が生じるなどの条件下、今大会は異例ずくめの開催となった。

「F4マカオグランプリ」決勝レース=2020年11月22日、マカオ・ギアサーキット(写真:GCS)

 開催期間は例年から1日短い3日間(11月20〜22日)に。開催レースも「フォーミュラ4(F4)グランプリ」、「マカオGTカップ」、「マカオギアレース(ツーリングカー)」、「マカオツーリングカーカップ」、「グレーターベイエリアGTカップ」の5種のみに。グレード及び世界的な注目度も高く、マカオの4大看板レースと称される「F3グランプリ」、「WTCR(世界ツーリングカーカップ)」、「GTワールドカップ」、「モーターサイクルグランプリ」の開催はなく、例年と比較して物足りなさも感じられた。例年と規模が大きく異なることから、冠スポンサーの募集も見送られた。

 大会の運営にあたり、参加者の安全性に配慮するため、厳格かつ多重の防疫対策も講じられた。大会直前にレーシングドライバー、レーシングチームスタッフ、サーキット及びピットエリアのスタッフ、メディカル・レスキュースタッフに対する新型コロナウイルス核酸検査を実施。このほか、香港、台湾、外国から参加するドライバーとスタッフについては、入境前に新型コロナウイルス感染症に罹患しておらず、密接接触者にも含まれないこと、現居地からマカオへの航空機での出発前またはマカオ入境前に核酸検査を受け、陰性であることを証明すること、マカオ到着後14日間の指定場所における医学観察(隔離検疫)を受け、隔離検疫期間中に少なくとも核酸検査を2回受け、いずれも陰性であることなどが参加条件とされた。結果は全員が陰性。なお、外国から参加のドライバーはマカオギアレースに出場した英国のハフ選手1人のみにとどまり、マカオ、香港、中国本土からのドライバーが中心となった。

 また、海外からマカオへ持ち込まれるレーシングカーはマカオに到着済みで、車検がスタートしている。レーシングカー及び各種物品についても、マカオ到着後に徹底した消毒を実施。大会開催期間中、レース参加者及びすべての入場者は所定の健康申告の提示、検温、マスク着用が必須となり、観客はソーシャルディスタンスの確保を求められた。現場を取材する中で、防疫対策をめぐる混乱は特に見受けられず、レース参加者、観衆ともに理解が浸透しているように感じた。ピットエリアには例年通りレースクイーンの姿もあった。当然、レースクイーンたちもマスク着用が必須となるが、マスクを含めてデザインしたコスチュームを採用することで、違和感を軽減する工夫もなされていた。

地元マカオ勢がトップ2独占した「F4マカオグランプリ」の表彰式。プレゼンターは賀一誠マカオ行政長官=2020年11月22日、マカオ・ギアサーキット(写真:GCS)

 大会最終日となる22日、5種類のレースの決勝が行われた。メインは午後3時30分スタートのF4マカオグランプリ(12周)。このカテゴリーのレースはマカオ初開催だった。優勝はポールポジションの梁瀚昭選手、2位は2番手スタートの鄭穎聰選手で、いずれも地元マカオのドライバー。1位と2位のタイム差は0.513秒、1位と3位の差は23秒で、マカオ勢が圧倒的な差をつけてのワンツーフィニッシュを飾ったことから会場は大いに盛り上がった。レースは後半にかけて3台による熾烈な4位争いも見どころとなった。

 優勝した梁瀚昭選手はレース後の記者会見に臨んだ際、マカオグランプリ60周年大会の時は客席から観戦する立場だったが、いつの日かマカオの大会で勝ちたいと思っていたことを明かした。決勝レースについては、終盤に周回遅れの車に道を塞がれ、後続に差を詰められてしまったが、全神経をレースに集中することで雑念を振り払ったと述べた。2位の鄭穎聰選手は100%以上の努力をした結果としての順位、またファステストラップを記録できたことにも満足しているとした。

 マカオ政府体育局の潘永権局長は閉幕後に囲み取材に応じた際、コロナ禍にあって大会を無事に開催することができたことに対する各方面への感謝の意を示すとともに、3日間の入場者数が延べ約5万人(参考までに前年は4日間で8万6000人)に上り、市中の人の流れも増え、大会の開催によるツーリズム及び経済促進効果は事前目標をクリアするものだったと総括した。観戦チケットの一部について、これまで現場の最前線でコロナ対応に当たってきた医療従事者へ配布したことも明らかにした。

 すでにマカオと中国本土の間の往来制限は大幅に緩和されており、マカオでは中国本土からのインバウンド旅客の回復が期待されている。今回のマカオグランプリ会場でも、マカオ政府旅遊局による中国本土向けとみられる簡体字中国語による広告バナーが多数掲出され、マカオの安全性や隔離検疫免除で訪問できることなを積極的にアピールしていた。

「マカオギアレース」決勝スタート前のピットエリアの様子=2020年11月22日、マカオ・ギアサーキットにて本紙撮影

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