中国の河川、抗生物質汚染深刻=専門家が全人代で指摘「私は大きく丸々成長した魚を食べない」

中国における食の安全や環境問題に世界的な関心が集まっている。中国技術分野の最高研究機関にあたる中国工程院のメンバーで、広州呼吸疾病研究所所長の鐘南山氏は3月10日、北京で開催中の全国人民代表大会(=全人代、中国の国会に相当)に出席し、中国の牧畜業、水産養殖業における抗生物質の乱用について警鐘を鳴らした。

香港の日刊紙「アップルデイリー」が3月10日付電子版で報じた。鐘氏は昨年(2014年)出版された「科学通報」掲載の研究論文を引用し、中国の地表水中には68種類の抗生物質が含まれ、かつ高濃度である現状を示した。また、広東省を主な流域とする珠江、上海の黄浦江などでは、抗生物質検出が100%に達したとした。珠江支流の石井河では、スルホンアミド系(静菌性抗菌薬)の濃度が基準値の10倍以上だったという。

同氏によると、河川で検出される抗生物質の出所は動物の排泄物、水産養殖業、未処理の医療排水の大きく3つで、特に牧畜業及び水産養殖業における抗生物質の乱用が最も憂慮されるという。中国では一部の抗生物質が人畜共用であることから、第1に食肉から直接、第2に動物の排泄物で汚染された河川の魚を通じて人体に到達し、薬物耐性を高めてしまう可能性があると指摘。欧米ではヒトにとって重要な抗生物質の家畜への投与が禁じられている現状を重要視すべきだとした。

同氏は「河川の水を飲むのは薬を飲むのと同じだ」とした上、「私は大きく丸々成長した魚を食べない」と語り、事態の深刻さを訴えた。

珠江下流域には広州、香港、マカオといった都市が並び、中国南部最大の珠江デルタ経済圏を形成している。

広東省珠海市を通ってマカオの横から南シナ海へ至る珠江の分流(資料)—本紙撮影

広東省珠海市を通ってマカオの横から南シナ海へ至る珠江の分流(資料)—本紙撮影

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