マカオの12月カジノ売上 対前年最大1割減も…大手金融機関予測=返還20周年記念で中国中央トップの来訪が影響か

 マカオ政府博彩監察協調局が公表した最新データによれば、マカオの今年(2019年)1〜11月累計のカジノ売上は2696.17億マカオパタカ(日本円換算:約3兆6727億円)で、前年同期比2.4%減だった。

 通期のカジノ売上は昨年まで2年連続で対前年プラスで推移。また、昨年は4年ぶりに3000億マカオパタカの大台を突破した。今年も12月を残すのみとなり、先行きに関心が集まっている。

 このほど複数の金融機関が発表したレポートの中で、今月(12月)のカジノ売上は最大で対前年1割程度のマイナスになるとの予測を示し、その要因としてマカオ返還20周年記念式典に出席するため中国中央のトップが来訪すること、比較対象となる前年同月のベースが高かったことを挙げた。マカオのカジノ市場では、中央トップの来訪やマカオグランプリ開催期間前後にカジノ売上が下がる現象がこれまでに確認されている。

 シティのレポートによれば、11月のカジノ売上は同行及び市場予測を上回る結果となったが、11月最後の6日間の1日平均カジノ売上は8.46億マカオパタカ(約115億円)で、その1週前から10%上昇したとのこと。12月については、マカオ返還20周年式典があるため中国中央トップや主要高官の来訪が予想されており、この時期(12月20日前後)にかけてVIPルームの主要顧客であるハイローラーと呼ばれる大口ギャンブラーがマカオ渡航を見合わせる可能性を指摘した上、対前年7%程度のマイナスになると予測を示した。また、10月の中国本土からのインバウンド旅客数は対前年1.5%増で、前年2月以来となる低い伸びにどどまったこと、伸長したのは広東省からのみで、他の省市からは軒並みマイナスという状況が3ヶ月にわたって続いていることを指摘。比較的富裕層の多いエリアからの旅客が減少し、10月の中国本土旅客全体に占める広東省以外からの割合は47.1%と、2011年2月以来で最低だったとのこと。

 モルガン・スタンレーは、11月のカジノ売上は事前予測と符合する1日平均7.63億マカオパタカ(約104億円)で、VIPルームに限ると推計20%超の下落だったとした。12月については対前年9%減、他の証券会社はの予測は10%減とし、主要因として前年同月のベースが高かったこと、中央トップの来訪を挙げた。

 ゴールドマン・サックスは、11月の1日平均カジノ売上は7.63億マカオパタカ(約104億円)で、(10月初旬の)国慶節ゴールデンウィーク以降から軟調が続いているとした。また、カジノ仲介業者及びカジノ業界データの情報として、直近1週間のVIPルームにおけるカジノ売上が依然として弱含みの状況にあるほか、マス(平場)についても12月は中央トップの来訪に絡み、中国本土からのマカオ渡航回数制限及び中国本土における新規のマカオ行き個人旅行ビザの発給停止が行われていることから、短期的に中国本土からのインバウンド旅客数に影響が及ぶ可能性があると指摘。前年のベースが高いこと、中国本土からのインバウンド旅客数が限られることをが主な理由となり、12月の予測として1割超のマイナスと予測した。一方、このような状況はごく短期的なものであり、来年1月には状況が一変するだろうとし、来年はマクロ経済予測、財政政策緩和、インフラの改善、人民元為替レートの安定などを反映し、年間売上は対前年3%増、内訳はVIPルームが横ばい、マスが5%増で推移するとの見通しとした。

 マカオの月次カジノ売上は2014年6月から2016年7月まで26ヶ月連続で前年割れだったが、2016年8月から2018年12月まで29ヶ月連続で対前年プラスを維持。その後、今年に入って以降は1、3、4、7、8、10、11月がマイナス、2、5、6、9月がプラスとなっている。

大型カジノIR(統合型リゾート)が建ち並ぶマカオ・コタイ地区の風景(資料)=2018年2月ー本紙撮影

大型カジノIR(統合型リゾート)が建ち並ぶマカオ・コタイ地区の風景(資料)=2018年2月ー本紙撮影

【資料1】2019年のマカオの月次カジノ売上の推移(カッコ内は前年比)
・1月:249.42億マカオパタカ=約3398億円(5.0%減)
・2月:253.70億マカオパタカ=約3457億円(4.4%増)
・3月:258.40億マカオパタカ=約3521億円(0.4%減)
・4月:235.88億マカオパタカ=約3214億円(8.3%減)
・5月:259.52億マカオパタカ=約3536億円(1.8%増)
・6月:238.12億マカオパタカ=約3244億円(5.9%増)
・7月:244.53億マカオパタカ=約3332億円(3.5%減)
・8月:242.62億マカオパタカ=約3306億円(8.6%減)
・9月:220.79億マカオパタカ=約3008億円(0.6%増)
・10月:264.43億マカオパタカ=約3603億円(3.2%減)
・11月:228.77億マカオパタカ=約3117億円(8.5%減)
>1〜11月累計:2696.17億パタカ=約3兆6727億円(2.4%減)

【資料2】2013年〜2018年のマカオの年間カジノ売上の推移(カッコ内は前年比)
・2013年:3607.49億マカオパタカ=約4兆9150億円(18.6%増)
・2014年:3515.21億マカオパタカ=約4兆7893億円(2.6%減)
・2015年:2308.40億マカオパタカ=約3兆1447億円(34.3%減)
・2016年:2232.10億マカオパタカ=約3兆0407億円(3.3%減)
・2017年:2657.43億マカオパタカ=約3兆6201億円(19.1%増)
・2018年:3028.46億マカオパタカ=約4兆1256億円(14.0%増)

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