マカオ、カジノ法改正案の内容が明らかに…ライセンス最多6枚、契約期間は最長10年など

 マカオは2007年にラスベガスを抜いて以来、世界一のカジノ売上を誇る。現在、マカオ政府とコンセッション(カジノ経営権契約、カジノライセンスに相当)を結ぶ6社がおよそ40のカジノ施設を運営。ただし、6社の契約満期日が今年(2022年)6月26日に迫りつつある状況。

 現行のコンセッションが満期を迎えるにあたり、マカオ政府は既存契約の延長ではなく再入札を実施するという方針を一貫して示しており、再入札実施に向けた法整備などの準備を進めている。マカオの娯楽場幸運博彩経営法律制度(通称「カジノ法」)は、現行カジノコンセッションのスタート時期にあたる2001年に制定されたもの。政府は20年の間にカジノ業界はもとより、経済・社会状況も大きく変化したことを踏まえた法改正が必要とし、昨年(2021年)9月から10月にかけて同法改正に関するパブリックコメント(意見公募手続き)を実施した後、同年12月下旬に総括報告書を取りまとめた経緯がある。

 マカオ行政会は1月14日に会見を開き、行政法務庁の張永春長官が「カジノ法」改正案の内容をポイントを挙げて明らかにした。

 関心の高いトピックでは、ライセンスは最大6枚としており、いわゆるサブライセンスの禁止が明文化された。現状のライセンスも6枚だが、正副3枚ずつ(本ライセンス3枚それぞれにサブライセンスが1枚ずつ紐づく)という変則的なものとなっており、見直しが図られることを意味する。政府はパブコメ総括報告において、カジノ業界が一定の規模を維持することで、社会の安定と雇用機会を確保する重要な基盤となり、また安定的な税収の保証による政府の収支バランス均衡化が各種民生福祉の継続と社会インフラ建設推進を有利かつ安定的に実現できるとの見方を示していた。

 コンセッション期間は最大10年とし、例外的な状況下において最大3年までの延長オプションを付けるとした。現状の約20年プラス延長最大5年との比較では大幅短縮となるが、パブコメ総括報告では、20年より短縮の意見が最も多く、政府もコンセッション期間の短縮によって発展の趨勢や政策に応じてタイムリーかつ適切にカジノ業への調整をかける余地が生じ、業界の競争力確保につながるとの考えを示していた。なお、カジノ施設はコンセッション事業者が所有する不動産内に設置することとしており、現在マカオに存在する「衛星カジノ」については本規定に沿わないため、これに該当する新ライセンスの取得社があった場合、3年の猶予期間内に対処することが求められる。

 このほか、法案の主な内容として、カジノゲーミング活動の運営は国家(中国)及びマカオ特別行政区の安全維持の前提下において、さらにはマカオの経済多元化と持続的発展を促進することを必須とすることが明文化された。今後コンセッション事業者及びカジノ業界参入者(社)に対する資格審査と規制メカニズムを強化することも盛り込まれた。なお、パブコメで物議を醸した政府代表のコンセッション事業者への派遣は企業の業務運営及び独立性に干渉する恐れがあるとして見送られた。

 コンセッション事業者の資本金規模を50億パタカ(日本円換算:約710億円)に、またマカオ永久居民(マカオ永久居民IDカード保有者)がマネジングダイレクターとして保有する株式比率を15%にそれぞれ引き上げ、コンセッション事業者または支配株主企業の発行済み株式に占める上場株式の割合も制限するとしている。

 なお、本法案はカジノ経営コンセッションの一般競争入札プロセスの秩序ある進展を促すため、公布翌日から施行するよう提案としているが、資本金の増加及びマネジングダイレクターの持株比率などの規定については、現行コンセッション事業者には適用されない。

 今後、マカオ立法会で本法案の審議が進められるが、張長官は緊急採決をするものではなく、法律をベースに次期カジノ経営コンセッションの一般競争入札プロセスを展開する必要があることから、(現行コンセッションの満期となる)今年6月末までに審議がまとまらない可能性もあると予想されるため、既存のコンセッションを短期延長することを検討しており、具体的な取り決めについては後日政府から正式発表するとした。

【追記】(2022年1月18日マカオ時間20:24)

 マカオ行政会が1月14日の記者会見でカジノ法改正案の内容をポイントを挙げて明らかにしたが、今後はマカオ立法会で審議されることとなっており、18日に立法会公式サイトに法案の全内容が掲載され、より詳細な内容が判明した。重要とみられる部分を抜粋してご紹介したい。

 マカオでは、カジノ運営事業者に対するゲーミング(カジノ)テーブルの割当はカジノ監理当局のコントロール下にあり、2013年から10年間は毎年平均のカジノテーブル台数の増加率を3%以内とされている。改正法案では、マカオの首長にあたる行政長官が総テーブル台数の上限及び各テーブルの年間最低売上額を設定し、仮に2年連続で最低売上未達となった場合、政府が削減の権利を有するとしている。

 また、カジノ仲介業者(ジャンケットプロモーター)に対する制限を大幅に強化する内容となっており、サービス提供先はカジノ運営会社のうち1社に限り、特定のスペースを借りて独自のVIPルームを運営することやレベニューシェア契約を結ぶことも不可で、コミッションのみを受け取ることができ、透明性を確保するためカジノ運営企業はコミッションにかかる税金(カジノ売上ベース)を源泉徴収するとしている。なお、税率は5%で、最大5年間について一部免除、交通・宿泊といったいわゆるコンプの部分はコストとして控除対象とされる。

 なお、改正法では、カジノゲーミング活動の運営は国家(中国)及びマカオ特別行政区の安全維持の前提下において、さらにはマカオの経済多元化と持続的発展を促進することを必須とすることが明文化されたが、その具体的な策についても言及があった。カジノ運営事業者が国家及びマカオ特別行政区の安全に対する脅威となる、あるいは適切な資格を持ち合わせない(疑わしい資金源や犯罪グループとの取引の存在など)と判断された場合、行政長官が一方的にライセンスを取り消すことができるとしている。

大型カジノIR(統合型リゾート)が建ち並ぶマカオ・コタイ地区の夜景(資料)=2020年7月本紙撮影

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