人口約740万人の香港では、昨年（2021年）12月末から新型コロナウイルス感染症の流行「第5波」が続く。

　2月から3月にかけて、オミクロン変異株亜種BA.2（いわゆる「ステルスオミクロン」）による伝播が主となり、市中における新規感染確認数が急増し、医療崩壊に直面するなど深刻な状況となった。3月下旬以降は緩やかな減少が続いたが、長く単日200〜300人程度でこう着状態が続いた後、近日は400〜500人程度に上昇し、軽微なリバウンドが出現したとされる。

　香港衛生当局が6月9日夕方の記者会見で発表した内容によれば、同日午前0時時点集計の単日の新規感染確認数は前日から116人増の674人（輸入性73人含む）とのこと。内訳はPC検査経由が332人、迅速抗原検査経由（反復検査で陽性が確定したもの）が342人。9日連続で200〜300人水準を上回る状況。第5波開始以来の累計感染者数は約120.4万人。新規の死亡報告数は1人で、第5波開始以来の累計死亡者数は9177人に。

　香港では、4月から段階的に水際措置を緩和したため、このところ輸入性の感染例が連日出現し、人数は30人前後。オミクロン変異株亜種（BA.4、BA2.12.1など）の感染者も相次ぎ見つかっている。

　3月下旬以降に流行状況が安定したことを受けて、4月中旬から5月中旬にかけて学校の対面授業再開、ソーシャルディスタンス措置の緩和（第一段階及び第二段階）が段階的に進んだ。ただし、ソーシャルディスタンス措置の緩和以降、レストランやバーでクラスターの発生が相次ぎ、関連感染者数が数十人規模に達した例があるほか、隔離検疫ホテルで発生した交差感染から市中でのオミクロン変異株亜種（BA2.12.1）の伝播につながったケースもある。

　9日の学校からの陽性報告数は81校の90人。前日からは4人減だったが、直近4日間は対面授業再開後の平均水準を上回る状況が続く。

　このほか、9日夕方の会見では、市中で新たにオミクロン変異株亜種のBA2.12.1感染疑いの患者が新たに8人、同じく亜種のBA.4またはBA.5感染疑いの患者が1人見つかったことも明らかにされた。後者は空港に隣接するホテルに勤務する女性とのこと。また、第5波開始以降に二度感染した人が2人おり、第1〜4波の期間に感染歴がある人のうち約900人第5波で再感染したことも発表された。

　ソーシャルディスタンス措置の緩和後、大きなリバウンドはないものの、ベースはじわじわ上昇が続いており、月内のソーシャルディスタンス措置の追加緩和は見送りが決まっている。今後、第6波に突入するのか否か、7月1日に就任する李家超（ジョン・リー）新行政長官の舵取りにも注目が集まる。

　6月8日午後8時時点の香港の3歳以上の人口におけるワクチン接種率は92.3%（1回目の接種完了）、87.5%（2回目の接種完了）となっている。接種率は昨年後半にかけて伸び悩んでいたが、流行第5波の深刻化、防疫措置の一環としてワクチンパス（所定施設入場時にワクチン接種証明の提示を要する措置）の導入計画発表などを受けて、年初から一気に上昇。ただし、このところは再び頭打ち状態に。8日単日の接種回数（1〜4回目の接種合計）は1万7563回で、7日移動平均は2万7354回。年齢層別の接種率（1回目の接種完了）では、3〜11歳（74.5%）、70〜79歳（81.21%）、80歳以上（67.92%）が大きく平均を下回っており、高齢者に対する訪問接種サービスを展開するなどの接種率向上策が講じられている。

香港特別行政区のイメージ（資料）—本紙撮影