マカオ政府、カジノ完全禁煙化を検討=喫煙ルームも廃止の公算

マカオ政府社会文化庁のアレクシス・タム(譚俊栄)長官は5月12日、マカオ立法会全体会議においてたばこ規制に関する演説を行った際、政府としてカジノフロアの完全禁煙化を検討していることを明らかにした。

マカオでは、2012年1月1日に室内公共場所の大部分を禁煙とする「新禁煙法(喫煙予防・抑制法)」が施行され、猶予期間を経て2013年1月1日に対象がカジノフロアに拡大されたが、この際は喫煙可能ゾーンをフロア面積の半分以内とする条件付きの「分煙」だった。その後、2014年10月6日からマスゲーミングフロア(平場)が全面禁煙となり、フロア内に喫煙ルームを設置され、今に至っている。なお、VIPルームについては、現在も例外として分煙となっている。

タム長官は、検討中の完全禁煙化策について、マスゲーミングフロアの喫煙ルームの廃止、VIPルームの全面禁煙化を含むものであることを明言している。

マカオのカジノ売上は昨年(2014年)6月から今年4月まで、実に11ヶ月連続で前年割れとなっている。昨年の通年カジノ売上は前年比2.6%減の3515.21億パタカ(約5兆2506億円)となり、今世紀初のマイナスを記録。今年1-4月の累計カジノ売上は前年同期比37.1%減の839.44億パタカ(約1兆2539億円)。マカオのカジノ売上減の理由として、中国本土富裕層を中心としたハイローラーと呼ばれるVIPカジノ客の流出が指摘されている。市場の低迷が長期化する中、完全禁煙化による影響を懸念する声も聞かれる。

タム長官は、喫煙者の自由を尊重するが、カジノ従業員、市民、旅客といった他者への影響を容認することはできないとの基本姿勢を示した上、すでに設置済みの喫煙ルームについてはカジノの中央空調装置から独立していないなどとし、周辺の空気質に影響を及ぼすことから廃止を提案すると説明。マカオ衛生局が地元教育機関に委託して実施した意識調査の結果で、85%の旅客がカジノの全面禁煙化に「反対しない」と回答、このうち喫煙者に限っても6割が同様だったという。「全面禁煙化ならマカオへ行かない」と回答したのは、喫煙者の中のおよそ1割に過ぎなかったという。また、今も分煙を採用しているVIPルームのカジノ売上が下落傾向にある一方、禁煙となったマスゲーミングフロアでは上昇していることを挙げ、禁煙とカジノ売上の相関関係については不明確であることの証左だとしている。

政府は来月までに完全禁煙化を盛り込んだ法案作成を進める方向としており、具体的な内容に注目が集まりそうだ。

カジノ全面禁煙化などについて地元メディアの取材に応じるアレクシス・タム(譚俊栄)マカオ社会文化庁長官=5月12日(写真:GCS)

カジノ全面禁煙化などについて地元メディアの取材に応じるアレクシス・タム(譚俊栄)マカオ社会文化庁長官=5月12日(写真:GCS)

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