マカオIR運営サンズチャイナが日本人観光客と日本コンテンツ誘致に高い関心…エグゼクティブ・バイス・チェアマンインタビュー

 最近、サンズマカオ、ヴェネチアンマカオ、ロンドナーマカオなど、マカオで複数の統合型リゾート(IR)施設を運営するサンズチャイナ社が傘下IR施設公式ウェブサイトの日本語対応や日本関連コンテンツの誘致に積極的な動きを見せており、日本への関心を強めているように感じる。

 もともとマカオの同業の中では日本における知名度が高い同社だが、どのような背景があるのか、このほど同社エグゼクティブ・バイス・チェアマンインタビューのウィルフレッド・ウォン(王英偉)氏へインタビュー取材を実施。同社が日本人観光客、そして日本コンテンツに対して高い関心と期待を抱いていることがうかがえた。以下にインタビューの抜粋を掲載する。

本紙:
 サンズチャイナ社は日本を重要なアジア市場のひとつに位置付けていると聞いていますが、今年の日本人観光客誘致に関する戦略やプランをお聞かせください。

ウォン氏:
 マカオへのインバウンド旅客数から見て、日本は我々にとって最も有望なアジアにおける国際旅客ソースのひとつです。また、当社による調査で、日本からの観光客1人あたりのIRにおける消費額が特に高いことがわかっています。これは、日本人観光客がマカオで体験できるさまざまなエンターテインメント、レジャー、ホスピタリティへの参加を好む傾向があることを示唆していると言えるでしょう。弊社にとって好機となり、日本人観光客の皆様の要望や期待に応えるべく、没入型のカルチャー体験、言語サポートといった特有の興味や嗜好への対応を含む各種マーケティングやサービスのカスタマイズに取り組んでまいります。

本紙:
 サンズチャイナ社は(マカオで開催中の日本をテーマにした大規模ツーリズム・カルチャー複合イベント)マカオ・ジャパン・スプリング・フェスティバル「CONTEMPO(コンテンポ)」の共同主催となっていますが、参画を決めた理由と期待する効果についてお聞かせください。

ウォン氏:
 サンズチャイナとして、マカオ政府旅遊局及びマカオ貿易投資促進局が後援するマカオ・ジャパン・スプリング・フェスティバルへ参画できることをたいへん光栄に思っています。マカオ政府の「ツーリズム+(プラス)」政策に呼応し、弊社は初開催となる当フェスティバルの共同主催者の一社となり、マカオと日本の両地域の交流促進につながり、またマカオ市民とマカオを訪れる旅客へ日本文化の素晴らしさを楽しんでいただく機会になればと考えています。私はこのイベントが文化交流の促進のみならず、中長期的に見てマカオのカルチャーカテゴリーの発展と充実に寄与し、またマカオと日本との結びつきを強化することにつながり、ツーリズム産業の発展という経済的な波及効果を生み出すと確信しています。また、世界中からマカオを訪れる観光客を魅了し、国際的な注目を集める起爆剤となる可能性を秘めていると思います。

本紙:
 サンズチャイナは八王子高校吹奏楽部やチームラボの常設ミュージアム、上述のコンテンポといった日本関連コンテンツを次々とマカオへ誘致していますが、今後どのようなプランをお持ちですか?

ウォン氏:
 サンズチャイナはマカオ政府が掲げるファミリーフレンドリーで幅広い層に多様なワールドクラスのエンターテインメント体験を提供するという目標にフルコミットし、ノンゲーミング要素の拡充に全力で取り組んでいます。この目標を達成のため、弊社の擁する卓越したベニュー群とさまざまなリソースの活用を進めており、一例として最近スペクタクルな「ハリーポッター展」を誘致し、傘下のIR「ロンドナーマカオ」で開催中です。もちろん、日本とのリレーションシップも継続、強化し、より多様でエキサイティングなイベントの数々を共に作り上げていきたいと考えています。私たちの共通の目標は、マカオへお越しの観光客の皆様に、素晴らしい体験を提供し、思い出に残るひとときを過ごしていただくことです。

本紙:
 マカオのインバウンド市場では中国本土からの旅客が大半を占めますが、日本をテーマにしたイベントで興味を喚起することはできるものでしょうか?

ウォン氏:
 日本は中国本土における人気の海外旅行先ランキングで上位の常連となっています。マカオで日本をテーマにしたイベントを開催することで、日本を訪れる機会がない中国本土からの旅客に日本の伝統文化、エンターテインメント、アート、料理などに触れていただく機会となり、こういった目新しい感覚がツーリズムエクスペリエンスの向上につながると考えます。

 マカオのインバウンド市場はアフターコロナで急回復が進むが、日本を含む国際旅客ソースに限ると戻りの遅れが指摘されており、マカオ観光の目玉のひとつであるIR各社の積極的な取り組みに期待がかかる状況。同社はマカオのIR運営企業の中で最大規模を誇り、今後も同社の日本関連の動きに注目したい。

サンズチャイナ社エグゼクティブ・バイス・チェアマンインタビューのウィルフレッド・ウォン氏(写真:Sands China Limited)

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  マカオ司法警察局は9月7日、非マカオ籍の男性ギャンブラーへ賭博用途のカネを高利で貸し付けた上、返…
  2.  マカオでは、台風11号(国際名「ヤギ」)の接近による影響で、9月5日午後10時から6日午後2時ま…
  3.  マカオでは、9月5日から6日かけて超大型の台風11号(国際名「ヤギ」)が接近し、激しい風雨に見舞…
  4.  マカオ経済の屋台骨となっているのが、カジノを主としたゲーミング(ギャンブル)産業だ。マカオにはカ…
  5.  マカオ司法警察局は9月5日、マカオで無資格にも関わらず薬剤の注射による美容医療行為に従事したとし…

ピックアップ記事

  1.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  2.  マカオ政府は6月17日、政府がコタイ地区の南東部に位置する約9万4000平米の国有地を活用し、約…
  3.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…
  4.  シンガポール発の国際ラグジュアリーホテルブランド「カペラ」がマカオ初進出することがわかった。カペ…
  5.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…

注目記事

  1.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  2.  マカオ治安警察局は3月5日、東京などからマカオへ向かう航空機内で窃盗を繰り返したとして中国人(中…
  3.  日本も出場した女子バレーボールネーションズリーグ(VNL)予選第2週のマカオ大会が5月28日から…
  4.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
  5.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年9月号
(vol.135)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun