マカオ政府「南京事件」追悼式典開催を決定、華僑系団体による反日写真展も=中国が制定した12月13日の記念日に

マカオ政府報道官事務所は12月10日、今年(2014年)12月13日の南京事件追悼日に合わせ、マカオ政府主催による追悼式典を開催することを発表した。崔世安マカオ行政長官、マカオに駐在する人民解放軍及び中央政府出先機関の幹部らが出席する予定。

南京事件追悼記念日(正式名称:南京大屠殺死難者国家公祭日)は、9月3日の抗日戦勝記念日(同:中国人民抗日戦争勝利紀念日)と並び、今年2月27日に中国の全国人民代表大会常務委員会で公祭日化が通過、決定したもの。マカオ政府は9月3日にも抗日戦争記念行事を開催している。

また、12月9日、中国の華僑系団体、中華全国帰国華僑連合会(中国僑連)はマカオで記者会見を開き、南京事件追悼日にあたる12月13日から3日間、マカオの塔石体育館で「血塗られた歴史—アジア太平洋地区における日本軍国主義の罪」と題した写真展を開催すると発表。マカオ政府の一部門であるマカオ基金会が補助金拠出し、資金面でサポートする。地元有力紙「澳門日報」が報じたところ、世界約60カ国の華僑が収集した第二次世界大戦期における旧日本軍の「罪深い行為」に関する史料及び写真をおよそ400点が展示される予定とのこと。記者会見の席上、中国僑連主席は、日本の政治家による靖国陣社参拝や東京裁判否定論を例に挙げ、軍国主義の亡霊が徘徊しているとし、日本軍国主義復活に高い警戒が必要であり、看過せず警告を発すると述べたという。

南京事件は、日中戦争初期の1937年に旧日本軍が中国・南京市(当時の中華民国の首都)をめぐる攻略戦において、中国軍の便衣兵、敗残兵、捕虜、一般市民などを殺害したとされるもの。事件の存否、死者数など、日本と中国それぞれで考え方は諸説あり、論争が続いている。

第二次世界大戦時、中立国ポルトガル領だったマカオは直接戦火の影響を受けなかった。現在、マカオは中華人民共和国の一部であり、香港と比較してマカオは中国本土への依存度が高いことから、中央と歩調を合わせ「反日」政策を推進するのは当然のこと受け取ることもできる。一方、マカオは中国本土や香港と比較して「親日」の市民が多いエリアとしても知られていることから、今回の追悼式典、反日写真展が一般層の間でどれだけの共感を得られるかについても注目される。マカオ政府はスポーツや文化、ビジネス分野における日本との交流にも積極的であることも事実で、極端に反日政策一辺倒というわけではなく、全体的には友好的といえる。マカオ市民の日常生活の中では日本食、日本文化、日本ブランドに対する根強い人気もあり、マカオから日本を訪れる観光客も円安の進行とともに増えている。マカオの多くの市民の間では、政治的な愛国反日キャンペーンに対して冷静な見方をしているようだ。

中国国旗とマカオ特別行政区旗(写真はイメージ)―本紙撮影

中国国旗とマカオ特別行政区旗(写真はイメージ)―本紙撮影

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