中国本土から1万人が「年間100回以上」香港へ=数次入境許可証利用、大量買い漁りで地元住民と摩擦

近年、中国本土から香港を訪れる旅客が急増している。昨年(2014年)中国本土から香港を訪れた旅客数は前年比16%増の4700万人となり、旅客総数の実に78%を占めた。

香港は北部の新界エリアで中国広東省シンセン市と接しており、上水(ションソイ)、屯門(ツェンムン)、沙田(シャーティン)、元朗(ユンロン)など、中国ボーダーからアクセスしやすいエリアに「水貨客」と呼ばれる転売目的の買い出し客が押し掛け、日用品などを大量に買い漁ることから、地元住民との間で摩擦も発生している。

中国本土から香港を訪れる旅客が急増したきっかけは、2003年に実施された「自由行」と呼ばれる中国本土の一部都市住民を対象とした個人旅行者向けの入境許可証発給解禁にある。以後、対象都市の拡大、所得増、人民元高などの追い風を受け、その数は右肩上がりの増を維持している。また、香港と陸続きの位置にある広東省シンセン市の住民は一度の手続きで何度も香港を往来できるマルチの入境許可を取得することができる。

香港の日刊紙「明報」が香港政府の内部分析データを根拠として3月1日に報じた内容によると、昨年、シンセンからマルチ入境許可を利用して香港を訪れた旅客は150万人おり、このうちおよそ1万人が年間100回以上往来していたという。平均3〜4日に1度のペースで香港を訪れた計算になる。このほか、3万人が年に50回以上、120万人が10回以下だったという。

香港特別行政区の梁振英行政長官は2月24日、受け入れキャパシティと市民生活への影響を考慮し、今月(3月)北京で開かれる全国人民代表大会及び中国人民政治協商会議へ出席する際、中央政府と「自由行」の縮小の是非について検討を行う考えを示している。

日本では中国本土旅客による「爆買い」による経済効果に注目と期待が集まっている。これまで、香港でも中国本土旅客の消費による地元経済への恩恵を受けてきたが、その数が膨張を続ける中、地元住民の間で危機感に変わりつつあるようだ。

中国・広東省深圳市と香港の陸路の玄関口のひとつ、羅湖出入境ゲート(資料)—本紙撮影

中国・広東省深圳市と香港の陸路の玄関口のひとつ、羅湖出入境ゲート(資料)—本紙撮影

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