大衆化進むマカオのカジノ、VIPルーム存在感低下

マカオのカジノ売上が昨年(2014年)6月から今年10月まで17ヶ月連続で前年割れとなっている。今年10月の単月売上は200.59億パタカ(日本円換算:約3030億円)で、今年5月以来となる政府財政予算目標の200億パタカ超えとなったが、1〜10月の累計では1960.74億パタカ(約2兆9622億円)と前年同期比35.5%の大幅減。

マカオのカジノ売上減の背景として、昨今の中国経済のスローダウン、反汚職キャンペーン、人民元の切り下げ(マカオ及び香港の通貨、パタカと香港ドルの為替はいずれも米ドルと連動)などを理由に、中国本土富裕層を中心としたハイローラーと呼ばれるVIPカジノ客のマカオ渡航意欲が減退していることが指摘されている。

かつてマカオのカジノ売上の7割を占め、大きな存在感を示したVIPルームだが、昨今のカジノ売上減少に伴い占有率も低下が続き、今年第3四半期(7〜9月期)には約55%にまで縮小した。一方、マス(平場)については比較的堅調に推移していること、マカオ政府がカジノ一辺倒からの脱却を目指す姿勢を明確化し、新規ゲーミング(カジノ)テーブルの認可にあたりライトユーザー層向けのレジャー・エンターテイメント要素の拡充を必須としたことなどから、カジノIR(統合型リゾート)運営各社もマス重視の方向に転換を進める動きを進めており、今後はマスがマカオのカジノの主役に躍り出ることが予想される。

象徴的だったのが、10月27日にマカオ・コタイ地区に開幕したIR、スタジオ・シティだ。事前に政府から割り当てを受けた250台の新規ゲーミングテーブルをすべてマスに配置し、マカオのIRとして初めてVIPルームを設置しない施設となった。マカオでは2017年頃まで大型IRのオープンラッシュが続く見通しで、VIPルームを設置する計画はあるものの、その規模は以前と比較して小さいものになるとの見通しだ。

マカオの日刊紙澳門日報が11月3日付紙面に掲載した記事の中で、中国本土企業の決算期にあたる年末を控えた11月、12月はハイローラーによる賭け金も控えめになりがちといい、カジノ売上にも影響が及ぶとするマカオのVIPルーム業者のコメントを紹介。また、カジノ業界に詳しい学者は、VIPルームビジネスは過去数ヶ月の間に安定しつつあるが、資金力に乏しい業者が廃業を余儀なくされる動きも続くとした。

なお、訪マカオ旅客数は統計の発表されている今年1〜9月までの累計で前年同期比2.9%減の約2285万人となっており、カジノ売上と比較して下落幅は小さい。

マカオのカジノ(写真はイメージ)—本紙撮影

マカオのカジノ(写真はイメージ)—本紙撮影

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  マカオ政府統計・センサス局が4月26日に公表した資料によれば、今年(2024年)3月の総合消費者…
  2.  マカオではアフターコロナで社会・経済の正常化が進んだ昨年(2023年)から歩行者による禁止場所で…
  3.  マカオ司法警察局は4月26日、前月(3月)コタイ地区の統合型リゾート(IR)併設カジノ場内にある…
  4.  澳門海關(マカオ税関)は4月26日、世界知的所有権機関(WIPO)が制定した「世界知的財産の日(…
  5.  マカオにとって最大の旅客ソースとなる中国本土では5月1日から5日までが5連休(「五・一」労働節ゴ…

ピックアップ記事

  1.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  2.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…
  3.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  4.  マカオ国際空港を本拠地とするマカオ航空(NX)が福岡便の運航を(2024年)7月12日から再開す…
  5.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…

注目記事

  1.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  2.  香港国際空港の制限エリア内にある「スカイピア」と港珠澳大橋マカオ側イミグレーション施設との間を港…
  3.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
  4.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  5.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年5月号
(vol.131)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun