港珠澳大橋―珠江デルタ一体化のシンボル

計画の概要

港珠澳大橋は東端を香港のランタオ島、西端を広東省珠海市の拱北とマカオの明珠とするY字型の架橋計画。プロジェクトは大きく3つに分類され、香港の香港国際空港の西にあたるランタオ島散石湾と珠海・マカオ分岐点にあたる珠澳人工島までの海上橋及び海底トンネル部、香港及び珠海・マカオ側の出入境施設、出入境施設から香港、珠海、マカオそれぞれ市街への連接道路から成る。主体部分にあたるはランタオ島䃟石灣から珠澳人工島までの35.6キロメートルは22.9キロメートルの海上橋と6.7キロメートルの海底トンネル部(間に人工島を挟む)で構成される。市街への連接道路を含むプロジェクト全体の総延長は実に49.968キロメートルにも及び、中国が誇る世界最長規模の架橋プロジェクトとなる。なお、港珠澳大橋は自動車専用で、鉄道敷設のための設備はない。

費用・工期

港珠澳大橋の総体プロジェクト予算総額は729.4億人民元。うち、主体部分にあたる35.6キロメートルの海上橋、海底トンネル部は347.2億人民元で、政府貸付方式による資本金は157.3億人民元(拠出内訳:中国本土70億人民元、香港67.5億人民元、マカオ19.8億人民元)で、残額を銀行によるローンで調達する。

港珠澳大橋2009年12月15日に着工済みで、2016年末の開通を目指している。橋の設計寿命は120年,震度8の地震、レベル16の台風にも耐えられる強固な構造という。橋には高速道路規格の6車線道路が敷設され、最高速度は時速100キロメートルを想定(市外への連接道路は時速80キロメートル想定)。

効果・利便性

港珠澳大橋の開通後、例えば香港国際空港から珠海、マカオへの自動車移動による所要時間は、北へ大きく迂回するルートから東西を直線で結ぶルートになることで、従来の約4~5時間から一気に「30分台」へ短縮できるという。試算によると、2035年までに1日50,000~60,000台の車輛が通行、利用人数はのべ230,000~250,000人と見込まれている。また、橋の開通により自動車からの二酸化炭素排出量は1日当たり1,100トン減少するとの調査結果も発表されている。気になる通行料だが、現時点では自家用車100人民元、トラック200人民元程度の安価な設定にしたいとの意向があるようだが、最終的には開業3か月前に決定する予定だ。

1997年、1999年にそれぞれ中国へ復帰した香港、マカオだが、一国二制度の下、それぞれ独自の出入境、税関事務を行っている。港珠澳大橋により結ばれる香港、珠海、マカオの間を往来する際、従来ならばそれぞれの出入境でそれぞれ出境、入境の手続きを行う必要があったが、港珠澳大橋では1か所で出入境手続きをまとめて行う「三地三検」が導入される予定。これにより、出入境にかかる時間や手間を大幅に短縮することができるとされる。

港珠澳大橋の開通後、自動車で香港と珠海、マカオを往来できるようになるわけだが、具体的にはどのように生活スタイルが変わるのであろうか。マカオを訪れる日本人にとっての利便性という点で見ていくことにする。現状、日本とマカオ国際空港を結ぶ直行フライトはマカオ航空による成田、関空便のみで、本数が限られている。しかし、香港国際空港へは地方を含む日本の主要都市から多くのフライトが就航している。港珠澳大橋の香港側起点は香港国際空港と連結される予定で、日本の各都市から香港国際空港へ到着した旅客は、そのまま香港へ入境せず、空港内から直接連絡バス等に乗り換え、橋を経由してマカオのイミグレーション島向かう。そこで初めて入境審査を受ける形だ。現在のターボジェットシーエクスプレスによる入境の流れを継承するイメージだ。マカオのイミグレーション島からマカオ市街へのアクセスについては、LRT(新交通システム)の延伸が予定されているほか、主要カジノリゾートホテルが無料シャトルバスを運行することも容易に想像できる。

香港で自家用車や社用車を利用している駐在員も多いだろう。残念ながら、香港で登録されている自家用車はマカオ域内へ乗り入れできないことが決まっている。香港ナンバーを付けた自家用車は珠海とマカオのイミグレーションが設置される珠澳人工島の駐車場までとなる。なお、珠海への乗り入れについては現時点で未発表。逆に、マカオ登録の自家用車の香港への乗り入れについては、現時点で可否が曖昧な状況。マカオ車輌は近くロータスブリッジ(蓮花大橋)を経由して珠海・横琴新区への乗り入れが可能になると発表済みで、これをきっかけにマカオ・横琴・香港の三地共通自動車保険制度の研究が始められているあることから、香港への乗り入れについても具体的に模索される見通しだ。

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