人口約740万人の香港では、昨年（2021年）12月末から新型コロナウイルス感染症の流行「第5波」が続く。

　2月から3月にかけて、オミクロン変異株亜種BA.2（いわゆる「ステルスオミクロン」）による伝播が主となり、市中における新規感染確認数が急増し、医療崩壊に直面するなど深刻な状況となった。3月下旬以降は緩やかな減少傾向を維持している。

　香港衛生当局が5月13日夕方の記者会見で発表した内容によれば、同日午前0時時点集計の単日の新規感染確認数は前日から4人増の298人（輸入性21人含む）とのこと。内訳はPCR検査経由が126人、迅速抗原検査経由が172人。4日連続で上昇となったが、20日連続500人以下を維持した。第5波開始以来の累計感染者数は約119.5万人。

　新規の死亡報告数は3人で、第5波開始以来の累計死亡者数は9146人に。

　香港では、4月から段階的に水際措置を緩和したため、このところ輸入性の感染例が連日出現し、オミクロン変異株亜種（BA.4など）の感染者も相次ぎ見つかっている。

　流行状況の安定を受けて、4月中旬から学校の対面授業再開、ソーシャルディスタンス措置の第一段階緩和と第二段階の一部先行緩和が実施されているが、新規感染者数の目立ったリバウンドは出現していない。

　学校については、毎朝迅速PCR検査を実施し、陰性の場合のみ登校することができる。13日の学校からの陽性報告数は3つの学校から3人で、内訳は学生1人、教職員2人。

　ソーシャルディスタンス措置の緩和によって、近日はクラスターの発生も相次いでいる。5月1日に新界・元朗地区にある火鍋店で発生したものは、これまで20人規模に達している。12日には九龍・ホンハム地区にあるビリヤード場のケースが報告され、感染者の累計6人に。さらに、13日には新たに香港島・上環地区にある中国料理店に7日の夕食時間帯に居合わせた客29人とスタッフ1人が感染したケースが明らかとなった。当局では、大規模なクラスターの発生は、依然として市中にウイルスが存在し、伝播リスクがあることを示しているとの見方を示した。

　5月12日午後8時時点の香港の3歳以上の人口におけるワクチン接種率は91.5%（1回目の接種完了）、85.6%（2回目の接種完了）となっている。接種率は昨年後半にかけて伸び悩んでいたが、流行第5波の深刻化、防疫措置の一環としてワクチンパス（所定施設入場時にワクチン接種証明の提示を要する措置）の導入計画発表などを受けて、年初から一気に上昇。ただし、このところは再び頭打ち状態に。12日単日の接種回数（1〜4回目の接種合計）は2万6128回で、7日移動平均は2万8297回。年齢層別の接種率（1回目の接種完了）では、3〜11歳（71.77%）、70〜79歳（80.13%）、80歳以上（65.43%）が大きく平均を下回っており、高齢者に対する訪問接種サービスを展開するなどの接種率向上策が講じられている。

香港の町並み（資料）—本紙撮影