本土旅券の渡航制限、カジノ仲介人に影響―マカオ

最近のカジノに関するネガティブ情報やW杯開催の影響を受け、今年(2014年)6月、7月と2ヶ月連続でカジノ売上が対前年割れとなり、中でもVIPカジノの落ち込みが大きかった。VIPカジノ関係者によると、下落の要因として7月1日に導入された中国本土旅券に対する渡航制限が客ではなく仲介人に及ぼす影響を指摘する。

8月15日付地元有力紙「澳門日報」が報じた。これまで、マカオではマカオを経由して第三国へ渡航するための「トランジット滞在」を認められており、入境時に当該国が発給したビザを添付したパスポート及びフライトのEチケットを提示することでマカオに1週間の滞在ができた。中国本土籍の旅客がマカオを訪れる際、「自由行」と呼ばれる個人旅行ビザを取得するのが一般的だが、一定期間内の渡航回数に制限が設定されている。しかし、トランジット滞在制度はこの回数制限の影響を受けない「裏技」の入境方法として広く認知され、実際に利用されてきた。

しかし、マカオ当局警察部門の資料によると、昨年約210万人の中国本土旅客が第三国、地域のビザを添付した中国パスポートを利用してマカオに入境したというが、うち8割が実際にはビザ発給国、地域へ渡航せず、マカオ滞在のためだけに利用されたことがわかった。本来の目的と違った形で利用されている状況を鑑み、マカオ出入境を管轄するマカオ政府治安警察局で検討を行った結果、7月1日から制度改正を実施。具体的にはトランジット制度を利用したマカオ滞在期間を従来の7日間から2日減の5日間に。また、第三国、地域へ渡航しなかった場合、60日以内(従来30日)の再入境時の滞在期限は1日となる。また、この場合に60日以内の3度目の入境は認められない。

当初、この措置に伴うVIPカジノ顧客への影響が懸念されていたが、関係者によると、実際にはVIP顧客のエスコート役である仲介人への影響が大きいという。それぞれのVIP顧客がマカオを訪れる頻度が多いわけではなく、一度の滞在期間はルールに定められた日数で十分に足りるとのこと。一方、そういった中国本土のVIP顧客をマカオへエスコートする仲介人も、実は中国本土籍の者が比較的多いという。彼らもパスポートを使って中国本土とマカオの間を往復して顧客をエスコートするため、一人で複数の顧客を抱えることから、頻繁に両地の間を往復する必要がある。しかし、7月1日からスタートした渡航規制により、これまでのような活躍ができなくなったことから、VIPカジノ売上の減少につながったのではないかとみられている。

また、マカオ政府が7月1日からカジノフロア内における銀連カード端末の増設を禁止する発表を行ったが、これに関して小売店や質店での銀連カードの使用が禁止されるなどの事実無根の噂が流布されたことに伴うVIP客の購買意欲減退も見受けられたという。

一方、複数の金融機関が発表した8月のカジノ売上予想によると、最初の11日間の1日平均カジノ売上は9.82億パタカ(日本円換算:約126.0億円)となり、7月の9.17億パタカ(約117.6億円)を上回る。仮に月末まで1日平均9.82億パタカを持続したとし、それにスロットマシン売上を加えた月間カジノ売上は295〜305億パタカ(約3,783〜3,912億円)になると予想される。

マカオのカジノ(写真はイメージ)―本誌撮影

マカオのカジノ(写真はイメージ)―本誌撮影

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