大量の中国本土旅客が香港・マカオへ殺到、キャパ超え寸前=両政府が政策見直し検討へ
- 2015/2/25 9:43
- 社会・政治
昨年(2014年)の訪香港旅客総数は12%増の約6080万人(のべ、以下同)となり、このうち中国本土からの旅客が前年比16%増の4700万人、実に全体の78%を占めた。「水客」と呼ばれる買い出し客による日用品の大量の買い漁り行為、交通機関や観光地の混雑など、中国本土旅客と香港の地元住民との間でさまざまな摩擦が発生している。
また、同年の訪マカオ旅客総数は7.5%増の3150万人となり、このうち中国本土からの旅客が前年比14%増の2100万人で、全体の67%を占めた。マカオの場合、中国本土旅客と地元住民の間で目立ったトラブルはないが、香港と比較して面積で約37分の1、人口で約12分の1と規模が小さいことから、交通機関や繁華街の混雑に伴う日常生活への影響も懸念されている。
中国本土から香港・マカオを訪れる旅客が急増したきっかけは、2003年に実施された「自由行」と呼ばれる中国本土の一部都市住民を対象とした個人旅行ビザの解禁にある。以後、対象都市の拡大、所得増、人民元高などの追い風を受け、その数は右肩上がりの増を維持している。
香港・マカオのいずれにおいても、中国本土旅客による地元経済への恩恵を受けながらも、その数が膨張を続ける中、受け入れキャパシティが限界に近づいているとの認識が広がっている。現在、香港と陸続きの位置にある広東省シンセン市の住民は一度の手続きで何度も香港を往来できるマルチビザを取得することができる。香港の親中左派政党民建連党首で、中国の全国政協委員を務める譚耀棟氏によると、中国本土から香港を訪れる旅客の訪問頻度が非常に高く、およそ8割の旅客が1ヶ月に10回以上香港を訪れるといい、回数に制限を設けるなどの調整が必要だと指摘する。
これまで「自由行」政策に対して積極的な姿勢を示してきた香港特別行政区の梁振英行政長官だが、ついに方針転換を決意したようだ。同氏は2月24日の記者会見で、今年3月に北京で開かれる全国人民代表大会及び中国人民政治協商会議へ出席する際、中央政府と「自由行」の縮小の是非について検討を行う考えを示した。梁長官は、受け入れキャパシティと市民生活への影響を考慮したことを方針転換の理由として挙げた。
マカオ政府でも、社会文化庁の譚俊栄長官が自由行のあり方などについて中央政府と見直し検討を行う準備があることを明らかにしている。
2003年の実施以来、拡大一辺倒だった自由行政策だが、12年目にして初めて「逆行」となる可能性が出てきた。