マカオ、2022年1月のカジノ売上は対前年20.9%減の約915億円…対前月でも20.3%減、水際措置一時強化影響か

 マカオ政府博彩監察協調局(DICJ)は2月1日、今年(2022年)1月のマカオの月次カジノ売上(Gross Gaming Revenue=GGR)について、前年同月から20.9%減、前月からも20.3%減となる63.44億パタカ(日本円換算:約915億円)だったとする最新統計を公表。

 前年同月比、前月比とも3ヶ月ぶりのマイナスに。

 マカオでは、2020年1月下旬から現在に至るまで入境制限を含む厳格な水際措置が講じられており、平年と比較してインバウンド旅客数が大幅に落ち込んでいる。ただし、同年第3四半期以降は中国本土との往来制限の緩和が進み、カジノ売上の回復につながった。しかしながら、2021年5月下旬にマカオと隣接する中国広東省、7月下旬には中国本土各地で新型コロナの再流行が出現。8月初旬及び9月下旬から10月初旬にかけてはマカオ域内でも市中感染確認例が相次いだ。直近では、1月上旬から中旬にかけて香港寄りの広東省深セン市及びマカオと陸続きの広東省珠海市とその北隣の中山市で市中感染確認例が出現。こういった事情から、入境制限を含む各種水際措置が一時的に強化されたことによるインバウンド旅客減が昨年6月、8月、9月、10月と今年1月の売上に影響を与えたとみられる。今年1月の広東省における再流行は一旦落ち着き、旅客数は回復傾向にある。これまでも一旦落ち込んだ後、旅客の回復に伴い反動増となることを繰り返してきたことから、2月は上昇に転じる可能性もある。

 今年1月の1営業日あたりの平均売上は2.05億パタカ(約29.6億円)。新型コロナの影響が生じて以降の推移については、2020年第2四半期の0.23億〜0.56億パタカ(約3.3億〜8.1億円)が底で、2021年5月にかけて回復が進み、その後は水際措置の調整と連動してアップダウンを繰り返している。

 参考までに、2021年通期(1〜12月累計)のカジノ売上は対前年43.7%増の868.63億パタカ(約1兆2524億円)で、3年ぶりの対前年プラスに。ただし、マカオ政府の2021年度財政予算における当初カジノ売上見込みの1300億パタカ(約1兆8743億円)には大きく届かなかった。政府は2022年度予算における売上見込みについても同額に据え置いている。

 このほか、特殊要因として11月下旬にマカオ最大手のカジノ仲介業者(ジャンケットオペレーター)「サンシティ」トップが不法賭博容疑などで逮捕されたことを受け、同社が運営するVIPルームが11月末までに全閉鎖となったほか、これを契機に複数のカジノ運営企業が仲介業者との協力関係見直しを図り、他社のVIPルームも一部閉鎖に。直近では、業界二位と目される「タクチュン」のトップについても1月29日にサンシティ事案に絡んだとして逮捕されており、業界に激震が走っている。今年1月中旬に上程されたカジノ法改正案には、仲介業界に対する規制強化も盛り込まれた。

 かつてマカオのカジノ売上の大半がVIPルームによるものだったが、近年ではマス(平場)シフトが進み、割合は均衡あるいはマス優勢の状況となっていた。新型コロナウイルス感染症の影響が生じって以降もVIPルームの占める割合は縮小が続き、昨年は前年から10.7ポイント下落の32.8%に。カジノ仲介業界に大きな動きのあった昨年第4四半期に限ると25.7%。ジャンケット系VIPルーム閉鎖によるカジノ売上全体への目立った影響は出ていないとされる。

ゲスト及び従業員のマスク着用やカジノ用品の消毒強化といった防疫対策を講じた上で営業を続けているマカオのカジノ施設(資料)=2020年3月(写真:GCS)

【資料1】2021年のマカオの月次カジノ売上の推移(カッコ内は前年比)
・1月:80.24億パタカ=約1157億円(63.7%減)
・2月:73.12億パタカ=約1054億円(135.6%増)
・3月:83.06億パタカ=約1198億円(58.0%増)
・4月:84.01億パタカ=約1211億円(1014.4%増)
・5月:104.45億パタカ=約1506億円(492.2%増)
・6月:65.35億パタカ=約942億円(812.5%増)
・7月:84.44億パタカ=約1218億円(528.1%増)
・8月:44.42億パタカ=約641億円(234.0%増)
・9月:58.79億パタカ=約848億円(165.9%増)
・10月:43.65億パタカ=約629億円(40.0%減)
・11月:67.49億パタカ=約973億円(0.01%増)
・12月:79.62億パタカ=約1148億円(1.8%増)
>通期(1〜12月累計):868.63億パタカ=約1兆2524億円(43.7%増)

【資料2】2013年〜2020年のマカオの年間カジノ売上の推移(カッコ内は前年比)
・2013年:3607.49億パタカ=約5兆2018億円(18.6%増)
・2014年:3515.21億パタカ=約5兆0687億円(2.6%減)
・2015年:2308.40億パタカ=約3兆3286億円(34.3%減)
・2016年:2232.10億パタカ=約3兆2186億円(3.3%減)
・2017年:2657.43億パタカ=約3兆8319億円(19.1%増)
・2018年:3028.46億パタカ=約4兆3669億円(14.0%増)
・2019年:2924.55億パタカ=約4兆2170億円(3.4%減)
・2020年:604.41億パタカ=約8715億円(79.3%減)

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