マカオLRTタイパ線、開業6ヶ月目の1日あたり乗客数は1400人…前月から微増も新型コロナによるインバウンド旅客減で低迷続く

 マカオ初となる本格的な軌道系大量輸送機関(鉄道)として、マカオLRT(Light Rapid Transit)が昨年(2019年)12月10日に営業運転を開始。すでに開業7ヶ月目を迎えているが、利用者数は低迷し、事前予測を大きく下回る状況が続いている。

 タイパ線はマカオLRT第1期プロジェクトの一部で、タイパフェリーターミナル駅と海洋駅の間の9.3キロ、11駅の区間が開業済み。沿線には香港や広東省主要都市との間を結ぶ高速船が発着するタイパフェリーターミナル、マカオ国際空港、広東省珠海市の横琴新区との陸路のボーダーにあたるコタイ・イミグレーションといった陸海空の玄関口のほか、大型カジノIR(統合型リゾート)が密集するコタイ地区、著名観光地のタイパヴィレッジ、高層マンションが建ち並ぶ新興住宅街が存在する。

 運営会社のマカオLRT社は6月3日、開業後6ヶ月間(2019年12月〜2020年5月)の乗客数データを公表。1日あたり平均乗客数(延べ、以下同)は開業初月の12月は3万3000人に上ったものの、以降は1月が1万6000人、2月は1100人、3月は1400人、4月は1200人、5月は1400人と低迷が続いている。マカオ政府は開業を前に1日あたり平均乗客数予測を約2万人としていた。

 1月以降に乗客数が大きく減少した理由として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う入境制限を含む防疫措置が1月後半から本格的に講じられ、その後も現在に至るまで厳格化が進んでいることが挙げられる。インバウンド旅客数の推移をみると、1月が13.6%減、2月は95.6%減、3月は93.7%減、4月は99.7%減。入境制限は現在まで維持されており、5月についても4月並みが予想される。陸海空の玄関口と大型カジノIR集積地区などを結ぶインバウンド旅客が多く見込まれる路線にとって、低迷もやむなしといった状況だ。このほか、乗客数にマイナス影響を及ぼす動きとして、開業日から続いていた運賃無料キャンペーンが1月末日で終了したこと、2月3日以降ダイヤ調整(間引き運転)を実施していることが挙げられる。

マカオLRTタイパ線(資料)=2019年12月10日本紙撮影

 マカオLRTは三菱重工グループの三菱重工エンジニアリング社の全自動無人運転車両システム(Automated Guideway Transit=AGT)を採用。同社がAGTシステムとして、東京の「ゆりかもめ」と同タイプのクリスタルムーバー型AGT車両(110両)、信号・列車制御設備、供電設備、通信システム、軌道、メンテナンス設備、ホームドア、料金機械を手掛けた。また、開業後5年間にわたる車両のオーバーホールメンテナンスも担当し、マカオLRTの安定運行をサポートすることになっている。AGTシステムは、電力駆動により完全自動走行する新交通システムで、ゴムタイヤ方式を採用しているため走行が滑らかかつ低騒音であるのが特徴。

 マカオLRT第1期プロジェクトの未開業部分のうち、マカオ半島線(媽閣から西灣湖、南灣湖、新口岸地区、マカオ半島北東部の住宅街を経由して關閘を結ぶ路線)はルート選定が難航するなどしており、本格着工に至っていない状況。マカオ特別行政区の賀一誠行政長官は4月21日の施政方針演説に対する質疑応答の中で、タイパ線のマカオ半島側への乗り入れ(タイパ線の海洋駅から西灣大橋を経由して媽閣駅に至る部分)について、自身の任期内(2024年12月19日まで)に実現させたいとの目標を示した。このほか、タイパ島北東部にあるマカオ国際空港からマカオ半島東部沖に造成中の埋立地を経由してマカオ半島北端にある關閘を結ぶ全長約9キロの新線計画(東線)に関して、全線地下を走る地下鉄に類する方式で検討していることも明らかにした。

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