マカオ政府が「旅客税」実行可能性調査結果公表…市民の95%が賛成も観光業界は反対多数=オーバーツーリズム対策の一環で研究対象に

 近年、訪マカオ旅客数は右肩上がりに増加しており、昨年(2019年)は延べ3940万人に達し、過去最多だった前年から約1割増だった。

 マカオの面積は東京の山手線の内側の半分にあたる約32平方キロ、総人口は約67万人という小さな地域だ。中国本土の大型連休中を中心に、世界遺産が多く集まるマカオ半島の歴史市街地区で通行規制が敷かれることも恒常化するなど、市民の間でオーバーツーリズムを指摘する声も聞かれる。

 日本では昨年1月から国際観光旅客税(出国税)の徴収がスタート、イタリアの観光都市ベネチアでも昨夏から日帰り旅客を対象にした訪問税を徴収しており、マカオ政府旅遊局(MGTO)でも、オーバーツーリズム対策の一環として、これらに対して高い関心を持ち、研究対象してきたという。

 MGTOでは、昨年5月20日からマカオ市民、観光業界、訪マカオ旅客を対象としたアンケート調査などを含む「マカオ旅客税」の実行可能性リサーチを展開。1月9日に調査結果を公表した。

 市民の大多数が税の徴収に賛成したものの、観光業界は反対意見が主流となり、賛否が大きく分かれる結果となった。税の徴収に賛成と回答した市民のうち、32.2%が徴収額を100~199マカオパタカ(日本円換算:約1370〜2720円)、21.9%が99マカオパタカ(約1360円)以下と回答。一方で、訪マカオ旅客の間では、100マカオパタカ以下でもマカオ渡航意欲に影響を及ぼすとする回答がの30.5%を占めた。

 アンケート調査の有効回答数は1万4900で、税の徴収に対する賛否の割合は市民が「賛成95/反対5」だったのに対し、観光業界では「賛成20/反対80」。方マカオ旅客の過半数が税の徴収がマカオ渡航意欲に影響するとした。

 リサーチの総括として、旅客の量をコントロールすることを目的とした徴税例は世界的にも類がないこと、導入例の分析でも導入初期にのみ旅客増のペースを低減させるに過ぎないことがわかったこと、税の徴収が旅客のマカオ渡航意欲を減退させるため中国が国家プロジェクトとして推進する中国広東省と香港、マカオの一体的経済圏構想「粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア)」に不利であることが挙げられた。

 MGTOでは、今回の調査を踏まえ、経済、観光デスティネーションとしてのイメージ、粤港澳大湾区政策といった要素を含めて慎重に考慮した上で政策決定を進めていきたいとしている。

 なお、マカオはカジノ税という潤沢な財源を抱えており、大幅な財政黒字が続いている。新たな財源を観光税に求める必要性は全くなく、むしろ観光税導入によって旅客の渡航意欲が減退し、カジノ税へマイナス影響を与えた場合のリスクの方が大きいといえる。

マカオの観光名所のひとつ、世界遺産・セナド広場(写真:MGTO)

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