マカオ、9月のカジノ売上は対前月3割上昇も約815億円にとどまる…年内二番目の低水準=水際措置再強化響く

 マカオ政府博彩監察協調局(DICJ)は10月1日、今年(2021年)9月のマカオの月次カジノ売上(Gross Gaming Revenue=GGR)について、前年同月から165.9%増、前月から32.4%増となる58.79億マカオパタカ(日本円換算:約815億円)だったとする最新統計を公表。

 前年同月比では8ヶ月連続でプラスを維持。前月比では2ヶ月ぶりに上昇したが、今年に入って以降で二番目の低水準だった(最低は8月)。

 マカオでは、昨年1月下旬から現在に至るまで入境制限を含む厳格な水際措置が講じられており、平年と比較してインバウンド旅客数が大幅に落ち込んでいる。ただし、昨年第3四半期以降は中国本土との往来制限の緩和が進み、カジノ売上の回復につながった。しかしながら、今年5月下旬にマカオと隣接する中国広東省、7月下旬には中国本土各地で新型コロナの再流行が出現。8月初旬と9月下旬にはマカオで市中感染確認例もあった。こういった事情から、入境制限を含む各種水際措置が一時的に強化されたことによるインバウンド旅客減が6月、8月、9月の売上に影響を与えたとされる。ただし、5月下旬からと7月下旬からの再流行も約1ヶ月で終息し、水際措置は従前の水準まで緩和されたが、目下のところは9月下旬のマカオでの市中感染確認例の出現を受けて水際措置が引き締めとなり、10月初旬の中国本土の大型連休(国慶節ゴールデンウィーク)のインバウンド旅客動向にマイナス影響が及ぶ見通しだ。

 9月の1営業日あたりの平均売上は1.96億マカオパタカ(約27.1億円)。新型コロナの影響が生じて以降の推移は、昨年2月(2月5〜19日の休業期間を除く14日間)2.22億マカオパタカ(約30.8億円)、3月1.70億マカオパタカ(約23.6億円)、4月0.25億マカオパタカ(約3.5億円)、5月0.56億マカオパタカ(約7.8億円)、6月0.23億マカオパタカ(約3.2億円)、7月0.43億マカオパタカ(約6.0億円)、8月0.43億マカオパタカ(約6.0億円)、9月0.74億マカオパタカ(約10.3億円)、10月2.35億マカオパタカ(約32.6億円)、11月2.25億マカオパタカ(約31.2億円)、12月2.52億マカオパタカ(約34.9億円)、今年1月2.59億マカオパタカ(約35.9億円)、2月2.61億マカオパタカ(約36.2億円)、3月2.68億マカオパタカ(約37.2億円)、4月2.80億マカオパタカ(約38.8億円)、5月3.37億マカオパタカ(約46.7億円)、6月2.18億マカオパタカ(約30.2億円)、7月2.72億マカオパタカ(約37.7億円)、8月1.43億マカオパタカ(約19.8億円)。昨年第2四半期が底で、以降は今年5月にかけて回復が進む様子が見てとれる。

 今年1〜9月累計のカジノ売上は前年同時期から75.6%増の677.87億マカオパタカ(約9398億円)。変動率は前月時点から5.5ポイント上昇。

 DICJは新型コロナ防疫体制下におけるカジノ営業にあたって運営会社に対して従業員及びゲストの健康を最大限保護することなどを求めており、ゲーミング(カジノ)テーブル間の距離の確保、テーブルゲームでは隣席を空ける対応(例えばバカラテーブルでは1テーブルに同時に着席できるのは3〜4人)、スロットマシンについても1台または2台おきの稼動と定められ、交差感染リスク軽減が図られている。チップ等のゲーミング用品に対する消毒も強化実施されている。再開したといっても、あくまで限定的ものだ。

 また、ゲストは入場時にマスクの着用、検温、有効な健康コード(衛生当局の専用サイト上で直近の滞在歴、新型コロナ患者との接触歴の有無、発熱や咳といった症状の有無、連絡先を入力して生成されるQRコード)の提示が義務付けられている。3月3日から新型コロナウイルス核酸検査陰性証明書の提示を必須とする措置は撤廃された。

 なお、昨年通期のカジノ売上は前年から79.3%減の604.41億マカオパタカ(約8379億円)で、2年連続前年割れ。マカオ政府の2021年度財政予算におけるカジノ売上見込みは1300億マカオパタカ(約1兆8023億円)。ただし、ここ数ヶ月は失速しており、予算達成は厳しい状況で、政府が下方修正を行う考えを示している。

ゲスト及び従業員のマスク着用やカジノ用品の消毒強化といった防疫対策を講じた上で営業を続けているマカオのカジノ施設(資料)=2020年3月(写真:GCS)

【資料1】2021年のマカオの月次カジノ売上の推移(カッコ内は前年比)
・1月:80.24億マカオパタカ=約1113億円(63.7%減)
・2月:73.12億マカオパタカ=約1014億円(135.6%増)
・3月:83.06億マカオパタカ=約1152億円(58.0%増)
・4月:84.01億マカオパタカ=約1165億円(1014.4%増)
・5月:104.45億マカオパタカ=約1448億円(492.2%増)
・6月:65.35億マカオパタカ=約906億円(812.5%増)
・7月:84.44億マカオパタカ=約1171億円(528.1%増)
・8月:44.42億マカオパタカ=約616億円(234.0%増)
・9月:58.79億マカオパタカ=約815億円(165.9%増)
>1〜9月累計:677.87億パタカ=約9398億円(75.6%増)

【資料2】2013年〜2019年のマカオの年間カジノ売上の推移(カッコ内は前年比)
・2013年:3607.49億マカオパタカ=約5兆0019億円(18.6%増)
・2014年:3515.21億マカオパタカ=約4兆8740億円(2.6%減)
・2015年:2308.40億マカオパタカ=約3兆2007億円(34.3%減)
・2016年:2232.10億マカオパタカ=約3兆0949億円(3.3%減)
・2017年:2657.43億マカオパタカ=約3兆6846億円(19.1%増)
・2018年:3028.46億マカオパタカ=約4兆1991億円(14.0%増)
・2019年:2924.55億マカオパタカ=約4兆0550億円(3.4%減)
・2020年:604.41億マカオパタカ=約8379億円(79.3%減)

関連記事

最近の記事

  1.  元NBA選手でバスケットボール界のレジェンドとして知られる姚明(ヤオ・ミン)氏が12月5日午後、…
  2.  マカオ政府身分証明局(DSI)は12月5日、同局が昨年(2023年)から発行を始めた最新版の居民…
  3.  マカオ治安警察局は12月4日、マカオ半島北西部の沙梨頭エリアにある路上で女子学生(成年)に対する…
  4.  数学(算数)及び科学(理科)の到達度に関する国際的な調査のひとつに国際教育到達度評価学会(IEA…
  5.  マカオ・コタイ地区にある統合型リゾート(IR)「グランドリスボアパレス(上葡京)」で12月4日、…

ピックアップ記事

  1.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  2.  マカオで統合型リゾート(IR)を運営するサンズチャイナと米国のホテル大手マリオットインターナショ…
  3.  マカオ政府は6月17日、政府がコタイ地区の南東部に位置する約9万4000平米の国有地を活用し、約…
  4.  マカオのマカオ半島側とタイパ島を結ぶ4番目の跨海大橋となる「マカオ大橋(澳門大橋/Ponte M…
  5.  マカオの新交通システム「マカオLRT(Light Rapid Transit)」の新線「横琴線(…

注目記事

  1.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  2.  日本も出場した女子バレーボールネーションズリーグ(VNL)予選第2週のマカオ大会が5月28日から…
  3.  マカオ治安警察局は3月5日、東京などからマカオへ向かう航空機内で窃盗を繰り返したとして中国人(中…
  4.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  5.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年12月号
(vol.138)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun