人口約730万人の香港では、昨年（2021年）12月末から新型コロナウイルス感染症の流行「第5波」が続く。

　2月から3月にかけて、オミクロン変異株派生型のBA.2（いわゆる「ステルスオミクロン」）による伝播が主となり、市中における新規感染確認数が急増し、医療崩壊に直面するなど深刻な状況となった。3月下旬以降は緩やかな減少が続いたが、長く単日200〜300人程度でこう着状態を維持した後、6月中旬から目立ったリバウンドが出現している。

　香港衛生当局が8月24日夕方の会見で発表した内容によれば、同日午前0時時点集計の単日の新規市中感染確認数は前日から1267人増の7677人、輸入性は37人減の207人だった。

　市中と輸入性の合計は前日から1230人増の7884人で、7千人超となるのは3月29日以来のこと。第5波開始以来の累計感染確認数は約146.7万人。

　新規死亡報告数は14人、年齢は45〜97歳で、このうち新型コロナワクチンの3回目の接種を済ませていたのは4人だった。第5波開始以来の累計死亡者数は9403人に。

　直近の公立病院の入院患者数（新型コロナ感染者）は2183人で、このうち新規の入院患者が328人とのこと。容体は危篤が39人、深刻が32人など。

　医管局では、入院患者数が増加傾向にあることを受け、23日に公立病院で第三段階病床調整プランを発動してコロナ患者用の病床を確保しており、緊急性を要しない医療サービスに影響が生じていることを明らかにした上、一部の私立病院は非常に協力的であるが、より多くの協力を得たいとした。

　このところの感染増の要因として、主流株がオミクロンBA.4／BA.5へ置き換わりつつあることが指摘されている。最新の8月21日の新規感染例に占めるオミクロンBA.4あるいはBA.5の割合は40.8%に達したとのこと。BA.2.12.1は8.7%%という。衛生当局は、流行が急拡大し、新規感染確認数も増えている状況だが、今後オミクロンBA.5の占める割合が6割以上となる可能性も排除できないとの見方を示した。また、BA.5は感染力と伝播スピードが速い特徴があり、単日の新規感染確認者数が1万人を突破する見込みとし、市民に対して集まって食事をする機会を減らすよう呼びかけた。

　香港では、4月から段階的に水際措置を緩和して以降、輸入性の感染例が連日出現しており、オミクロン変異株派生型の感染者も相次ぎ見つかっている。3月下旬以降に一旦流行状況が安定したことを受けて、4月中旬から5月中旬にかけて学校の対面授業再開、ソーシャルディスタンス措置の緩和（第一段階及び第二段階）が進んだ。

　ただし、5月19日のソーシャルディスタンス措置の第二段階緩和でバーの営業が再開可能となって以降、複数のバーで大規模なクラスターの発生が相次いだほか、隔離検疫ホテルで発生した交差感染をきっかけに市中でのオミクロンBA2.12.1の伝播につながったケースなどもある。こうした状況や6月中旬以降のリバウンドを踏まえ、ソーシャルディスタンス措置の一層の緩和は見合わせが続いており、少なくとも8月24日までは現状維持が決まっている。8月初旬には入境者の隔離検疫期間が3日間まで短縮されており、輸入性感染例の増につながること、隔離検疫期間満了後に発見に至るケースが一定数出現することが予想されていた。

　24日の学校からの陽性報告数は72校から101人。学校のみならず、高齢者介護施設などグループホーム、医療機関からの陽性報告も相次いでおり、小規模なクラスターも散発している。

　8月23日時点の香港の3歳以上の人口におけるワクチン接種率は93.3%（1回目の接種完了）、90.2%（2回目の接種完了）、70.6%（3回目の接種完了）となっている。接種率は昨年後半にかけて伸び悩んでいたが、流行第5波の深刻化を受け、年初にかけて一気に上昇。ただし、一旦状況が落ち着き、こう着状態となって以降は再び頭打ち状態に。22日単日の接種回数（1〜4回目の接種合計）は1万9040回で、7日移動平均は1万9819回。年齢層別の接種率（1回目の接種完了）では、3歳以下（8.29%）、3〜11歳（79.58%）、70〜79歳（82.44%）、80歳以上（70.33%）が大きく平均を下回っており、高齢者に対する訪問接種サービスを展開するなどの接種率向上策が講じられている。

香港のイメージ＝香港島・中環にて本紙撮影