習近平主席夫妻歓迎晩餐会、高級食材使わず倹約ムード演出=マカオ返還15周年記念行事

マカオ返還15周年記念式典に出席するため、中国の習近平国家主席夫妻ら中央政府代表団が昨日(12月19日)正午頃、マカオへ到着した。同日夜、マカオ政府による習主席夫妻の歓迎晩餐会がマカオドームの特設会場で開かれた。こういった場では、華やかな雰囲気と高級食材をふんだんに使ったメニューが並ぶ光景を想像してしまうが、実際には真逆だったことが現地で話題となっている。

本紙が入手したメニューリストによると、晩餐会で出されたのは中国料理のフルコースで、一般向けとベジタリアン向けの2種。どちらも、前菜盛り合わせ、メイン4品、フルーツ盛り合わせの流れ。アルコールはポルトガル産ワインの赤(Marques de Borba Reserva Tinto 2008)、白(Conde D’Ervideira Reserva 2012)それぞれ1種ずつ、ドリンクはコーヒーまたは中国茶という選択肢。

中華料理のフルコースといえば、アワビ、フカヒレ、ロブスター、燕の巣といった高級食材をふんだんに使った豪華絢爛なものが想像されるが、今回のメニューには、全くそういったものが見当たらなかった。メインの4品で使われた食材は、豚肉、チキン、白身魚、チマキといった、なんとも庶民的なラインナップ。それぞれのメニューには、中国らしくゲンを担いだ吉祥名が付けられ、シェフの技により美しい見た目の料理に仕上げられていたという。ちなみに、リストにあった2種類のワインの価格をポルトガルの通販サイトで調べたところ、1本あたり赤が約30ユーロ(日本円換算:4400円)、白が約8ユーロ(約1200円)となっていた。

また、会場も高級ホテルの宴会場などではなく、公営のマカオドーム内の特設会場となり、デコレーションもシンプルそのものだった。

中国といえば、メンツや見栄を重視するお国柄というのはご承知の通り。マカオ返還15周年という祝賀の場で、あえて倹約ムードを演出したのは、マカオが「身内」だからというのもあるが、別の理由が見え隠れする。習主席といえば、2013年3月の政権発足以来、汚職に対する取り締まりや贅沢禁止など綱紀の引き締め政策を積極的に推し進めてきたことで知られる人物だ。マカオのカジノ売上が、今年(2014年)6月以降、6か月連続で前年割れとなっているのも、この動きが大きく影響しているものとみられる。マカオのカジノ売上の大半を占めるVIPルームの主要顧客こそ、中国本土の富裕層だからだ。

今回の晩餐会メニューを通じ、習主席があらためて中国本土の富裕層に向けた無言のメッセージを発したとも受け取れる。マカオのカジノ売上の回復には、しばらく時間がかかるかもしれない。習主席は20日の演説で、マカオに対して「経済多角化の推進による持続可能な発展」を求め、政府はカジノ高依存体質からの脱却を早期に実現する必要に迫られている。

マカオ来訪歓迎晩餐会で乾杯する中国の習近平国家主席(右)と崔世安マカオ行政長官=12月19日、マカオドーム(写真:GCS)

マカオ来訪歓迎晩餐会で乾杯する中国の習近平国家主席(右)と崔世安マカオ行政長官=12月19日、マカオドーム(写真:GCS)

 

マカオ政府による習主席夫妻歓迎晩餐会の会場の様子=12月19日、マカオドーム(写真:GCS)

マカオ政府による習主席夫妻歓迎晩餐会の会場の様子=12月19日、マカオドーム(写真:GCS)

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  澳門海關(マカオ税関)は4月28日、各イミグレーション施設で検査体制の強化を図り、違法な運搬活動…
  2.  マカオ政府統計・センサス局が4月26日に公表した資料によれば、今年(2024年)3月の総合消費者…
  3.  マカオではアフターコロナで社会・経済の正常化が進んだ昨年(2023年)から歩行者による禁止場所で…
  4.  マカオ司法警察局は4月26日、前月(3月)コタイ地区の統合型リゾート(IR)併設カジノ場内にある…
  5.  澳門海關(マカオ税関)は4月26日、世界知的所有権機関(WIPO)が制定した「世界知的財産の日(…

ピックアップ記事

  1.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  2.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…
  3.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…
  4.  マカオ国際空港を本拠地とするマカオ航空(NX)が福岡便の運航を(2024年)7月12日から再開す…
  5.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…

注目記事

  1.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  2.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
  3.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  4.  香港国際空港の制限エリア内にある「スカイピア」と港珠澳大橋マカオ側イミグレーション施設との間を港…
  5.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年5月号
(vol.131)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun