世界カジノ三都物語〜ラスベガス・マカオ・シンガポール〜

 昨今、インバウンド(訪日観光客)拡大の切り札として、日本におけるカジノを含むIR(統合型リゾート)の導入機運が再び盛り上がりつつある。これに関する報道も活発となり、誘致に名乗りを上げる自治体や参入意向を表明する企業の名前も盛んに取りざたされている。

 広く世界を見渡せば、実はカジノを導入している国や地域が多いことに気づく。日本に近い東アジアだけでも、韓国、マカオ、サイパン、フィリピン、カンボジア、シンガポール、オーストラリア、極東ロシアなどが挙げられる。

 国や地域によりカジノ売上の規模は異なるが、昨年(2015年)の都市別カジノ売上高を比較すると、世界トップ3はマカオ(約289億米ドル=約2兆8900億円)、ラスベガス(約63億米ドル=約6300億円)、シンガポール(約48億米ドル=約4800億円)の順だった。

シンガポール随一の観光名所、マーライオンの正面に建つマリーナベイサンズ=本紙撮影

 記者はカジノ売上世界一のマカオに拠点を置いて生活しているが、このところ視察などでマカオを訪れる日本の関係者の姿が増えているように感じる。また、記者がマカオのカジノオペレーターから、日本の動向について質問を受ける機会も多くなった。マカオに限らず世界の主要カジノオペレーターが高い関心を抱く理由として、もし日本でカジノ解禁が実現した場合、売上規模でラスベガスを上回ると推測されていることが挙げられる。また、日本を競合ではなく、進出先の候補として捉えていることもあり、期待値は大きいようだ。海外メディアの報道では、「最後のフロンティア」などと表現されることもある。

 記者も後学のため、一昨年から昨年にかけて初めてラスベガスとシンガポールを訪問。自身が拠点とするマカオを含む3都市を比較することで、多くの新たな「気づき」を得ることができた。日本にもカジノIRが導入される可能性がある中、現時点で日本には存在しない概念のため、なかなかその姿をリアルにイメージできないという方も多いだろう。海外旅行へ出かける際、目的地としてカジノ先進国・地域を選び、日本の未来予想図を頭の中に描いてみるというのも興味深いように思う。日本へのカジノIR導入にあたっては、賛否両論さまざまな考え方があるのも事実。百聞は一見しかずということで、実際にどのようなものなのかを自身で確かめてみること自体、たいへん有意義な経験になるはずだ。

 以下、独特の物語を有する世界3大カジノ都市の概要など、記者個人の気づきも交えてを紹介していきたい。

次のページ:

1

2 3 4

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  このほどマカオ政府財政局(DSF)が公表した最新統計によれば、今年(2024年)4月の住宅売買・…
  2.  マカオ政府とコンセッション(カジノ経営権契約)を結ぶ6陣営の一角にあたるサンズチャイナは5月16…
  3.  澳門海關(マカオ税関)は5月15日、各イミグレーション施設で税関検査の強化を図るとともに、香港税…
  4.  マカオの統合型リゾート(IR)運営6陣営の一角にあたるサンズチャイナは5月15日、コタイ地区にあ…
  5.  きのう(5月15日)はマカオ及びマカオにとって第二の旅客ソースである香港でパブリックホリデーとな…

ピックアップ記事

  1.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…
  2.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  3.  シンガポール発の国際ラグジュアリーホテルブランド「カペラ」がマカオ初進出することがわかった。カペ…
  4.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  5.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…

注目記事

  1.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
  2.  マカオ治安警察局は3月5日、東京などからマカオへ向かう航空機内で窃盗を繰り返したとして中国人(中…
  3.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
  4.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  5.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年5月号
(vol.131)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun