世界カジノ三都物語〜ラスベガス・マカオ・シンガポール〜

ラスベガス

 カジノの街と聞いて、真っ先に頭に思い浮かべるのがラスベガスだろう。実際、2007年にマカオに抜かれるまで、長く世界一のカジノ都市の座に君臨していた。

 都市としてのラスベガスの歴史は、それほど長いものではない。アメリカの西部開拓時代前夜にあたる19世紀初頭に砂漠の中のオアシスとして「発見」され、ゴールドラッシュに沸いた19世紀中頃にカリフォルニアへ向かう中継地点としての役割を果たすようになり、20世紀初頭に鉄道が開通したことで交通の要衝となった。その後、ゴールドラッシュの衰退や1929年の世界恐慌をきっかけに、1931年にネバダ州が新たな財源確保を目的としてギャンブルを合法化。同年、景気対策としてフーバーダムの建設が始まったことを受けて多くの労働者が集まるようになり、第二次世界大戦中には軍事施設が次々と建設されたことで町が賑わい始めた。ただし、この頃のカジノは規模も華やかさも現在のものとは全く異なるささやかな規模のものだったとされる。

ラスベガス・ストリップ=本紙撮影

 ラスベガスが世界を代表するカジノ都市として飛躍するきっかけとなったのは、本格的なカジノ付きリゾートホテル「フラミンゴ」が誕生した1946年のこと。同ホテルが成功を収めたことで、次々と新たな参入者を呼び込むかたちに。なお、ラスベガスのリゾートホテルでは、すでにこの頃から有名スターを招聘したショーを開催するなど、エンターテイメント性を前面に押し出して集客していたそうだ。

 現在に至る大型IRの流れを作ったとされるのが、1989年にオープンした「ミラージュ」だ。「ラスベガスを変えた男」と呼ばれるようになるスティーブ・ウィン氏が手がけたリゾートで、派手なアトラクション、水族館、マジックショーなどを併設し、ギャンブラーだけでなく、家族連れでも楽しめるような仕掛けを盛り込みんだ。ラスベガスのショーの代名詞とも言えるシルク・ドゥ・ソレイユも、ウィン氏が1993年にオープンさせた「トレジャーアイランド」に誘致したのが最初となる。

ラスベガス・ストリップ沿いに建つ大型IR。左から順にベラージオ、シーザースパレス、ミラージュ=本紙撮影

 カジノ売上では2007年にマカオに抜かれたが、ギャンブルを主としないレジャー、エンターテイメント、コンベンションを目的とした訪問者が増え続けているとのこと。実際、ラスベガスのノンゲーミング売上は2005年にカジノ売上を上回った。昨年のホテル客室数で比較しても、ラスベガスはマカオの5倍に相当する15万室規模に上り、かつ、客室稼働率も好調に推移していることから、カジノに大きく依存しない複合リゾート都市としての地位は確固たるものとなっている。

 ラスベガスは大きく旧市街にあたるダウンタウンとそこから南へ延びるサウス・ラスベガス・ブルバードに沿って広がるストリップの2つのエリアで構成される。大型IRが建ち並ぶのはストリップだ。各施設の規模が非常に大きく、端から端まで徒歩で巡るのは現実的ではない。事前に目星をつけておき、タクシーやバスを使って効率良く移動するのがベターだろう。

ラスベガス・ストリップ沿いに建つ大型IR。左から順にアンコール、ウィン、パラッツォ=本紙撮影

 ラスベガスの場合、ショッピングとエンターテイメントが特に充実している。大型ショッピングモールと、アウトレットモールを巡るだけでも丸1日以上かかるほど。昨今は円高とあってショッピングへの期待も高いが、8.1%の消費税がかかり、免税制度もないため、パラダイスとは言い難い。シルク・ドゥ・ソレイユをはじめとしたワールドクラスのエンターテイメントを毎日楽しめるのもラスベガスならではの魅力だ。ショーのチケットはオンライン予約に対応しているものがほとんどで、人気ショーは早めに座席を確保しておくのがベター。現地には当日券を格安で販売するショップもあるので、チェックしてみてもいいだろう。また、日帰りでグランドキャニオンを訪れるオプショナルツアーも人気となっている。

 カジノが24時間営業とあって夜でも活気ある街だが、人通りの少ない場所などでは安全面に十分に気配りする必要がある。

 かつては日本(東京)とラスベガスを結ぶ直行便もあったと聞くが、現在ではロサンゼルスなど西海岸の都市を経由して訪れるのが一般的。所要時間はフライトの約12時間に乗り継ぎ分をプラスする必要があり、かなり遠く感じる。また、時差も大きい。それでも、世界のカジノ都市がお手本とする「本場」とあり、カジノを語る上で、必ず訪れておきたい街であることに違いはない。余談だが、ラスベガスの空の玄関口となるマッカラン国際空港にもスロットマシンがあり、到着早々もしくは出発ギリギリまでカジノの街の雰囲気に浸ることができる。

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