マカオで受け継がれるフレンチの巨匠・ロブション氏のキュリナリーDNA…パリから現地入りした3人のシェフに聞く

 フレンチ界の巨匠、ジョエル・ロブション氏が昨年(2018年)8月に73年の生涯を閉じてから、一年あまりが経過した。

 マカオの高級リゾートホテル、グランドリスボアマカオにもジョエル・ロブション氏の名を冠したフレンチレストラン「ロブション・オ・ドーム」がある。ロブション・グループのレストランは世界各地に展開しているが、アジアにおけるグランメゾンはマカオと東京に存在するのみだ。

 ロブション氏の死後、昨年10月20日にマカオの「ロブション・オ・ドーム」で「The Legacy of Robuchon Lives On」と題したメモリアルガラディナーイベントが開催されたことは記憶に新しい。ジョエル・ロブション氏と長く仕事を共にし、そのキュリナリーDNAを引き継ぐ4人の愛弟子たち(パリに拠点を置くエリック・ブシェノワール氏、フランソワ・ブノ氏、檀崎友紀氏とマカオでエグゼクティブ・シェフを務めるジュリアン・トングリアン氏)によるクラシックなロブションスタイルのメニュー8皿で構成されるスペシャルコースが提供された。

 グランドリスボアマカオによれば、「ロブション・オ・ドーム」は年に1〜2回、インスペクションを受けているという。今回、パリから昨年のメモリアルガラディナーと同じ3人のシェフがマカオ入りし、クオリティチェックのほか、メニューに関する打ち合わせなどを行ったとのこと。

ジョエル・ロブション氏のキュリナリーDNAを引き継ぐシェフたち=2019年10月10日、グランドリスボアマカオ「ロブション・オ・ドーム」にて本紙撮影

ジョエル・ロブション氏のキュリナリーDNAを引き継ぐシェフたち=2019年10月10日、グランドリスボアマカオ「ロブション・オ・ドーム」にて本紙撮影

 今回、本紙は現地で3人のシェフに対するインタビュー取材の機会を得た。伝統の継承、ミシュランガイドで高く評価される理由、日本の食文化に対する関心などについて、興味深い話を伺うことができた。

-ロブション氏が亡くなって1年になります。グループレストランで何か変化はありましたか?また、今後どのようにしてレガシーを受け継いでいくのでしょうか?

 特に変化はありません。お客様にも変わらずご愛顧いただいています。また、アメリカのマイアミやスイスのジュネーブにも新店をオープン予定です。私たちは、クオリティ、そして食材をリスペクトするということを非常に大切にしています。「ネバーギブアップ」の精神も持ち合わせています。定着率が高く、長く一緒に働くメンバーが多いのもロブション・グループの特徴と言えます。シェフを媒介として、グループ全体にバリューとレガシーを継承していくのです。世界はどんどん変化しますし、料理も新たな設備の登場などによって時代に合わせて進化していきますが、ベーシックなところは同じです。私たちの、よりピュアなもの、よりヘルシーなものを追求するというスタイルは、これからも受け継がれていくでしょう。

-昨年10月、こちらでメモリアルガラディナー「The Legacy of Robuchon Lives On」が開催されました。今年はマカオで同様のイベントはないとのことですが、今後もし実施するとしたらどのようなイベント、メニューをご用意されるのでしょうか?

 2週間ほど前に、東京で「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」の25周年を記念したガラディナーを開催しました。マカオでは、今年6月にシェルフィッシュ(甲殻類)をテーマにした5皿で構成するスペシャルディナーコースをご提供しました。実は、マカオの中華圏のお客様がシェルフィッシュを好まれるのに合わせ、ロブション氏が最初に3つ星を獲得したレストランの季節メニューを再現したものだったのです。私たちは料理の季節感を重要視しています。ちょうど今頃(秋)は白トリュフのシーズンですね。ロブション氏は四季の変化に富む日本をたいへん愛していました。

-マカオのロブションはミシュランガイド香港マカオ版創刊以来、3つ星をキープし続けています。他と比較して高く評価される理由についてどのように考えますか?

 私たちは常にベストを尽くし、最上級の品質、そして食材をリスペクトする姿勢をキープしています。また、レールを外れていないか常にチェックしており、もし外れているようなら、元に戻すようにしています。シェフの個性、そしてチームとして長く一緒にやっていることも挙げられます。(マカオでエグゼクティブシェフを務める)ジュリアンも、ロブションで働き始めてから15年ほどになります。

-日本の食材や日本の食文化に対する関心について。

 ロブション氏はもちろん、私たちも食を含む日本の文化全体に大きな魅力を感じています。日本料理ですと、みんなお寿司が大好きです。日本料理はたいへん健康的で、生の魚を使うこと、食材をリスペクトする姿勢など、ロブションのスタイルと共通項があると言えます。先日、日本のガラディナーに行った際に実感したのですが、日本のチームはすべての仕事において基本に忠実でした。ロブション氏は、こういった日本の国民性を高く評価していました。もちろん、日本の食材も使っていますが、地場の食材を優先しています。日本のゲストがマカオの「ロブション・オ・ドーム」を訪れた際には、素材の違いをお楽しみいただけると思います。

 今後もロブション氏の魂が息づく「ロブション・オ・ドーム」の動向に注目していきたい。

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