マカオのカジノ法改正案に大きな変更…税負担軽減と衛星カジノの存続盛り込む

 マカオ政府は、現行カジノ経営コンセッションの満期が近づく中、次期コンセッションの入札に向けて、娯楽場幸運博彩経営法律制度(通称「カジノ法」)の改正に向けた手続きを進めている。

 同法は、現行カジノコンセッションのスタート時期にあたる2001年に制定されたもの。政府は20年の間にカジノ業界はもとより、経済・社会状況も大きく変化したことを踏まえた法改正が必要との考えを示している。昨年(2021年)秋から具体的に動き出し、同年内にパブリックコメント(意見公募手続き)と総括報告書を取りまとめた。その後、今年1月下旬のマカオ立法会本会議で賛成多数で一般性通過となり、現在は立法会常設委員会での細則性審議が行われている。

 5月14日、政府が立法会の常設委員会に最新の改正法案を提出し、2つの大きな変更が含まれていることが明らかとなった。

 1つ目は「衛星(サテライト)カジノ」の取り扱いについて。衛星カジノとは、コンセッション事業者が自社所有ではない物件内で委託のようなかたちで運営するカジノ施設のことで、主にマカオ半島新口岸地区の中規模ホテルなどに入る施設が該当する。これまで、カジノ施設はコンセッション事業者が所有する不動産内に設置すること、規定に沿わない施設については3年の猶予期間内に対処することを求めるとしてきたが、一転して3年の猶予期間後もコンセッション事業者に場所の所有権を切り替えずに存続できるとされた。

 現在、マカオにはおよそ20軒の衛星カジノが存在する。コロナ禍で困難に直面している施設も多く、カジノ法改正案の内容が明らかになった後、撤退意向を示したところも複数あった。インバウンド依存度の高いマカオでは、コロナ禍で長期にわたって経済が低迷しており、昨年末以来のジャンケット系VIPルームの閉鎖ラッシュに加え、衛星カジノの撤退が進むことによる雇用や周辺ビジネスへの影響も懸念され、多くの立法会議員から政府に対して一刀両断的な措置に対する見直しを求める声が上がっていた。

 2つ目は税負担の軽減。コンセッション事業者が義務として負担する公租公課はさまざまなものがあるが、一般的にカジノ税とされるものは、カジノ売上(Gross Gaming Revenue=GGR)の「35%」にあたるカジノ特別税が一般財源へ、また「最大2%(実勢1.6%)」が公共財団であるマカオ基金会への拠出金(文化、社会、経済、教育、化学、学術、慈善活動用途)、「最大3%(実勢2.4%)」が都市インフラ整備、観光振興、社会保障のための特定財源へそれぞれ充当され、合計でGGRの「40%(実勢39%)」となっている。これについては現状維持とみられていたが、最新版の法案では、マカオ基金会及び特定財源への充当分(最大5%分)について、公共の利益に資する場合、特に海外市場の開拓のため、カジノ委員会への意見聴取後、行政長官が一部または全部の免除を決定できるとされた。

 マカオ政府は、マカオを世界的ツーリズム・レジャーセンター化する目標を掲げているが、現時点の旅客ソースは中国本土に偏っており、また中国で新たに施行されたギャンブル規制に関する法律による影響も考慮し、コンセッション事業者の負担を軽減することで、中国以外の旅客ソースの拡大を促したい考えがあるという。

大型カジノIR(統合型リゾート)が建ち並ぶマカオ・コタイ地区の夜景(資料)=2020年7月本紙撮影

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