マカオカジノ(ゲーミング)産業発展史

ゲーミング産業の芽生え

清朝期(1907年)にマカオで撮影されたファンタンに興じる人々の様子(出典:Frederic Courtland Penfield: East of Suez. Ceylon, India, China and Japan. New York: The Century Co. 1907.)

マカオのカジノ(ゲーミング)産業発展の源は16世紀にまで遡る。この時期、主に中国本土からマカオへ移民した建設業従事者、港湾荷役業従事者、家事使用人の間で最初のゲーミングムーブメントが巻き起こった。当時はまだ法律による統制などはなく、胴元が各々ゲーミングテーブルを用意し、市内あちこちに賭場を開設していたという。

1842年にマカオと隣接する香港が英国へ割譲された後、貿易港としての地位を香港に奪われたマカオは没落してしまう。ポルトガル・マカオ政庁は税源の確保と産業多角化のため、1847年に初めてゲーミングを合法化した。19世紀の1850年代、ゲームの種類が「ファンタン(番攤)」のみというゲーミングハウスが200以上も軒を連ねた。19世紀後半にはゲーミング業から得られる税収が政府歳入の大半を占めるまでに至った。この時期から、マカオが「東洋のモンテカルロ」と呼ばれるようになったとされる。

1949年当時のマカオのカジノ (c) Time (出典:LIFE photo archive hosted by Google)

1930年、霍芝庭氏率いる「豪興公司」が歴史上初となるカジノ独占営業権を得る。「豪興公司」はセナド広場に近い新馬路の現在新中央酒店が建つ場所にカジノを開設した。豪興公司はマカオのゲーミング産業及び周辺サービスへ革新的アイデアを次々と採用し、ゲーミングホールの豪華絢爛な装飾、ゲーミングテーブルの設置、顧客へ無料でドリンクやフルーツ、タバコ、フェリーチケットの提供など、現在まで続く伝統を創り出した存在といわれる。

1932年、范潔朋氏ら在外華僑と米国商人により「マカオ・ドッグレース・アソシエーション(澳門賽狗會)」が組織され、マカオにドッグレースが導入された。これが現在ドッグレースを運営する「マカオ・カニドローム(逸園賽狗場)」の前身となる。しかし、当時としては斬新なギャンブルであったため、あまり評判を得られなかったという。

マカオの競馬については1842年に出現したというが、一定の規模で開催されるようになったのは「マカオ万国競馬スポーツアソシエーション(澳門萬國賽馬體育會)」が独占経営権を得て、マカオ半島北部の黒沙環に競馬場を開設した1927年以降のこと。

1949年当時の泰興公司のフラッグシップカジノ(現在の新中央酒店) (c) Time (出典:LIFE photo archive hosted by Google)

1937年、マカオのゲーミング産業の歴史に大きな影響を及ぼす大改革が行われた。この年、ポルトガル・マカオ政庁はカジノ独占営業権を一社に集中させることを決定。競争入札の結果、傅德榕氏、高可寧氏率いる「泰興公司」が落札。泰興公司は今も建物が残る新馬路の新中央酒店をフラッグシップカジノとして改築し、現在マカオで最も人気かつメジャーなゲームとなる「バカラ」などの新ゲームを採り入れる。

その後、日中戦争が勃発し、香港が陥落。主に香港からのギャンブラーを中心顧客としていたマカオの競馬やドッグレースは重大な影響を受け、1942年に営業を停止する。

1961年2月、第119代マカオ総督マルケス氏の提案により、ポルトガル政府はマカオを「恒久ゲーミング特区」として開放し、マカオをカジノ及び観光業を中心に発展させる低税制地区とした。また、マルケス総督は「ゲーミングの結果は偶然性に帰し、純粋に幸運なものが勝者となる」という「幸運博彩」という概念について定義付けしたことでも知られる。

次のページ:
1

2

3 4 5

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  マカオは長く本格的な鉄道が存在しなかったが、2019年12月に新交通システム「マカオLRT」タイ…
  2.  マカオ政府旅遊局(MGTO)は4月18日、今年第1四半期(2024年1〜3月)のマカオのツーリズ…
  3.  マカオ政府経済・科技発展局は4月17日、昨年第4四半期(2023年10〜12月期)の工業輸出状況…
  4.  マカオ・コタイ地区にあるギャラクシーアリーナで「ITTF(国際卓球連盟)男女ワールドカップマカオ…
  5.  マカオで複数のカジノIR(統合型リゾート)を運営するサンズチャイナ社は4月18日、今年(2024…

ピックアップ記事

  1.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  2.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…
  3.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  4.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…
  5.  マカオ国際空港を本拠地とするマカオ航空(NX)が福岡便の運航を(2024年)7月12日から再開す…

注目記事

  1.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  2.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  3.  香港国際空港の制限エリア内にある「スカイピア」と港珠澳大橋マカオ側イミグレーション施設との間を港…
  4.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
  5.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年4月号
(vol.130)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun