鉄道が拓くマカオの未来

「マカオLRT」プロジェクト概要

マカオに導入される新交通システムの正式名称は漢字で「澳門輕軌系統」、ポルトガル語で「Sistema de Metro Ligeiro de Macau」と表記される。一般呼称は「マカオLRT」で、LRTはLight Rapid Transitの略称だ。

現在発表されている「マカオLRT」の建設計画は第一期路線、第二期路線から成る。第一期としてマカオ半島北部で珠海市拱北との玄関口となる關閘からマカオフェリーターミナル(外港)、マカオ半島西部を経てマカオ半島南部の媽閣廟へ至り、そこから西灣大橋を経由してタイパ島へ入り、コタイ地区を大回りする形でマカオ国際空港、タイパフェリーターミナルへと至る21駅、約21キロのルートが着工済みで、2015年2月の完成、同年4月の営業開始を目指す。第二期は媽閣廟からマカオ半島東部を経て關閘へ至る約5キロのルートが計画されており、完成後は第一期のマカオ半島路線と合わせて環状線化される予定。なお、第2期については着工時期未定。この他、横琴新区、港珠澳大橋のイミグレーションが設置される人工島、さらにマカオ半島西南岸とタイパ島北岸に建設予定の臨海新都心へのアクセス路線についても整備が検討されている。

「マカオLRT」第一期を日本企業が受注

「マカオLRT」の車輌は広島県三原市にある三菱重工の工場で製造される (c) GIT 運輸基建辦公室

2007年、マカオ政府は「マカオLRT」第一期プロジェクトについての国際競争入札を実施することを発表。結果、日本の三菱重工と伊藤忠商事の共同体が46億8,800万パタカ(当時レートで約480億円)落札し、2011年3月にマカオ政府と受注契約を締結。受注内容は駅舎と土木工事を除くLRTシステム一式で、具体的には、APM車輌(110両)、供電設備、通信システム、軌道工事、検修設備、ホームドア、料金機械などで、増車やメンテナンスのオプション付き。APM(Automated People Mover)とは全自動無人運転のゴムタイヤ式車両で、日本では東京の「ゆりかもめ」と同タイプ。また、歴史上日本企業がマカオで受注に成功した最大級のインフラプロジェクトという点でも注目されている。

無人自動運転、ゴムタイヤ方式のAPM車輌 (c) GIT 運輸基建辦公室

なお、入札には日本連合(三菱重工・伊藤忠)、独・中連合、加・中連合の3陣営が応札した。その中で三菱重工・伊藤忠連合が落札した背景には、同連合による提案が、すでに鉄道敷設設備を持つ西灣大橋について、大きな補強工事を必要としない内容だったことも大きな勝因だったといわれている。もちろん、世界各地での実績、技術の高さ、コストパフォーマンスなどが評価されたことは言うまでもない。

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