鉄道が拓くマカオの未来

「マカオLRT」第一期プロジェクト詳細

一般公募で選ばれたロゴとマスコットキャラクター「輕仔」 (c) GIT 運輸基建辦公室

すでに工事がスタートし、順調に進めば2015年4月にも開業となる「マカオLRT」第一期プロジェクトについて、詳しく紹介していこう。

「マカオLRT」第一期プロジェクトはマカオ半島線、タイパ線の2路線で構成される。マカオ半島線がマカオ半島北部の關閘駅を起点に、マカオ半島西部を通って媽閣廟駅に至るルート。タイパ線は媽閣廟駅を起点に西湾大橋を渡り、タイパ島中心部、コタイ地区をぐるり一周してマカオ国際空港、タイパフェリーターミナルまで。路線延長は約21キロで、21駅が設置される。第一期ルートで注目すべき点はマカオへの玄関口となる主要出入境ゲート(關閘、マカオフェリーターミナル、ロータスブリッジ、マカオ国際空港、タイパフェリーターミナル)と、マカオ半島のビジネス及びホテル集積地区、コタイ地区の大型リゾートホテル群の各点がきちっと線で結ばれること。マカオを訪れる観光客にとって、たいへん利便性が高いルートといえるだろう。

地下駅として建設され総合交通ハブとなる媽閣駅 (c) GIT 運輸基建辦公室

「マカオLRT」第一期ルートはほとんどが高架線を走るが、西灣湖駅、媽閣駅は景観に配慮する形で地下駅となる。駅舎デザインは各駅ごとに趣向を凝らしたものとなる予定。全21駅のうち、マカオ線とタイパ線の乗換駅となる媽閣駅、タイパ島の中心に位置する馬曾駅の2駅はバスターミナル、タクシー乗降場、大型駐車場などを擁する「總合交通樞紐(交通ハブ)」として整備が予定されている。媽閣駅では対岸の広東省珠海市で整備が進む横琴新区の十字門まで駅直結の歩行者専用地下トンネル、イミグレーション施設を建設する計画も具体化している。馬曾駅からは補助交通機関として駅周辺の住宅地、観光名所への動く歩道整備が行われる。

「マカオLRT」車内イメージ (c) GIT 運輸基建辦公室

「マカオLRT」で導入される車輌はクリスタルムーバ―と呼ばれる日本のゆりかもめと同タイプのもの。騒音が少なく乗り心地の良いとされるゴムタイヤ式で、無人自動化運転を行う。2012年夏には試作車両の実寸大模型がマカオ市民に公開され、市民による投票で車輌デザインも「オーシャンクルーザー」に決定している。

運行計画も発表済み。列車は4両編成、運行頻度は3~6分間隔で、最大輸送人数(同一方向)は当初8,000人/時、順次14,000人/時まで引き上げられる予定。運行時間、運賃などは未定。

LRT開業で何が変わるか

LRTを中心とした都市計画が進む。写真はタイパ島の交通ハブとなる馬曾駅完成イメージ (c) GIT 運輸基建辦公室

歴史上、路面電車すらなかった「鉄道不毛地帯」マカオにとって、今回のLRT開業はエポックメイキングな出来事となる。官民挙げて「鉄道を中心とした街づくり」が行われることは間違いなく、政府、企業、市民、観光客など、マカオに関わる全ての人たちにとって大きなトピックとなるはずだ。日本や香港では当たり前となっている「駅近」という発想はまだマカオにない。今後、「駅近」物件の不動産価値上昇なども大いに考えられる。

LRT開業で最も期待されるのが「定時到着性の向上」だろう。現在、マカオの主要交通機関はバス、タクシー、自家用車、オートバイだ。交通渋滞の深刻化により到着時間が読めないことも多く、特に朝夕のラッシュ時の市民生活、観光客の移動に対する時間的ロスや心理的影響も大きい。また、ラッシュ時のバス混雑、慢性的なタクシー不足もあり、年間3,000万人もの観光客が訪れるアジア屈指の観光都市として必要とされるインフラ整備が追い付いていない状況もある。LRT開通により、こうした交通問題が解消されると期待されている。

次のページ:
1 2 3 4

5

6

関連記事

最近の記事

  1.  マカオ政府統計・センサス局は11月21日、昨年(2024年)マカオの文化産業調査結果を公表。 …
  2.  マカオ政府統計・センサス局は11月21日、今年第3四半期(2025年7〜9月)の民間建築及び不動…
  3.  マカオ政府統計・センサス局が11月21日に公表した資料によれば、今年(2025年)10月の総合消…
  4.  マカオではアフターコロナで社会・経済の正常化が進む中、歩行者の禁止場所や赤信号での道路横断行為が…
  5.  マカオ政府とカジノ経営コンセッションを結ぶ6陣営の一角、SJMリゾーツ社系の衛星カジノ施設のひと…

ピックアップ記事

  1.  今年(2025年)に入って以降、マカオ政府が新交通システム「マカオLRT」の新路線計画を相次いで…
  2.  マカオ政府は6月9日午後5時からマカオ政府本部ビルで特別会見を行い、SJMリゾーツ社、メルコリゾ…
  3.  マカオ政府旅遊局(MGTO)は4月29日、国際旅客誘致策の一環として昨年(2024年)実施した香…
  4.  仏ミシュラン社は3月13日、香港・マカオでも高い知名度と信頼性を誇る人気グルメガイド「ミシュラン…
  5.  マカオのマカオ半島側とタイパ島を結ぶ4番目の跨海大橋となる「マカオ大橋(澳門大橋/Ponte M…

注目記事

  1.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  2.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  3.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
  4.  日本も出場した女子バレーボールネーションズリーグ(VNL)予選第2週のマカオ大会が5月28日から…
  5.  マカオ治安警察局は3月5日、東京などからマカオへ向かう航空機内で窃盗を繰り返したとして中国人(中…

イベントカレンダー

11月 2025
      1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
« 10月   12月 »
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2025年12月号
(vol.150)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun