日本が福島原発処理水の海洋排出すれば10都県産食品を事実上の輸入禁止に…マカオ当局

 近日、香港やマカオでは、東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処理水)海洋放出設備の試運転開始の報を受けて、日本産食品の安全性に対する関心が高まっている状況。

 本件をめぐっては、7月12日に香港政府が香港における食の安全と公衆の健康を確保ことを目的とした予防原則に基づく措置として、一旦日本側が原発処理水の海洋排出を開始した場合、即時に日本の10都県(東京、福島、千葉、栃木、茨城、群馬、宮城、新潟、長野、埼玉)を原産地とする水産物の輸入禁止を計画していることを発表している。

 その後、マカオの食品安全行政を管轄する市政署(IAM)も7月14日に対応を明らかにした。

 マカオの公共放送局TDMが同日午後のニュース番組で報じた内容によれば、IAMは同局の問い合わせに対し、もし日本側が処理水の海洋放出を開始した場合、輸入申請モラトリアム(事実上の禁輸措置)の対象を現行の福島県に加えて9つの最高リスク地区(千葉県、栃木県、茨城県、群馬県、宮城県、新潟県、長野県、埼玉県、東京都)の野菜、果物、牛乳・乳製品、水産・水産加工品、食肉類・食肉加工品に拡大するとした上、他の地域から輸入される生鮮食品についても放射線検査証明の添付を必須とし、検査・検疫をパスすることを要件化する可能性も排除しないと考えを示したとのこと。

 IAMでは、2011年の福島第一原発事故後、福島県産食品を輸入申請モラトリアム対象とする措置を現在まで維持しており、福島県周辺の9都県産の食品についても現行の輸入衛生書類要件への準拠、日本が発行する放射線モニタリング証明及び原産地証明の添付、検査・検疫受検を必須としている。

 IAMは、同局への回答の中で、日本が原発処理水の海洋排出を計画していることを強く懸念し、輸入と小売の両面で食品中の放射性物質検査と監視を強化して臨み、日本から輸入された食品に対する検査サンプル数を増やすなどの対応を講じる中、これまでのところ特に異常は見つかっていないとしている。このほか、IAMはマカオに輸入される日本の水産品の産地は主に北海道、鹿児島県、福岡県、長崎県、愛媛県などとなっており、福島県及び周辺9都県からの生鮮食品の輸入比率は高くなく、影響は大きくないとの見方も示し、すでに現地の貿易業者らと会合を開き、輸入管理措置についての説明と対策を講じるよう促したとのこと。

 これまで日本政府は福島第一原子力発電所から「ALPS処理水」を海洋放出すると再三にわたって広報しているが、香港・マカオ政府のプレス発表やメディア報道では依然として「核廃水」や「核汚染水」といったネガティブなワードが使われる現状がある。本紙は原文の当該部分を「処理水」と訳して報じている。

マカオの「市政署ビル」は世界遺産登録建築物のひとつ(資料)=本紙撮影

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