マカオ行政長官、コロナ禍で税収減も毎年恒例の市民向け現金配布を維持する考え…支給額は増減なしの約13.2万円分

 世界一のカジノ売上を誇る都市として知られるマカオ。カジノ税という潤沢な財源を抱えるマカオ特別行政区政府は、インフレ対策や富の還元を理由に2008年から市民に対する現金配布を毎年実施している。

 現金配布は例年7月から9月にかけて実施されるが、今年(2020年)は新型コロナ経済対策の一環として、3ヶ月前倒し実施された。支給対象は前年末時点で有効なマカオ特別行政区永久性居民(永久居留権保有者)及び非永久性居民(臨時居留権保有者)IDカードの保有者で、所得や年齢の条件はない。支給金額は前者が1万マカオパタカ(日本円換算:約13.2万円)、後者が6000マカオパタカ(約7.9万円)とした。支給額はいずれも前年から据え置きだった。

 マカオでは新型コロナウイルス感染症防疫対策の一環として水際措置が強化され、インバウンド旅客が激減。インバウンド依存度の高いマカオ経済は低迷を余儀なくされている。また、政府の主要な財源となるカジノ税収も大幅減となり、同時に新型コロナ防疫、経済対策による支出増もあったことから、財政準備の超額準備分の一部を切り崩して赤字の補填が実施された。影響の長期化により、年度内に2度目の補填も計画されている。

 このような状況の中、マカオ特別行政区の首長にあたる行政長官は政府各部門に対し、来年度の歳出のうち、経常支出を1割カットすることを求める命令を発出。市民の間では、毎年恒例の現金配布の行方について大きな関心が集まっていた。

マカオ政府本部一般公開イベント会場で囲み取材に応じる賀一誠マカオ特別行政区行政長官=2020年10月17日(写真:GCS)

 賀一誠(ホー・ヤッシン)マカオ行政長官は10月17日、マカオ政府本部の一般公開イベント初日に現場を視察し、市民らと交流。会場で囲み取材に応じた際、市民の関心事である来年度の現金配布について言及した。

 賀氏は、現金配布の実施は社会的コンセンサスが取れたものであるとし、いかなる変更もなく従来通りの方式で継続するとの考えを示した。支給金額は、財政状況を理由に「増減なしだ」とし、前年並みとなる模様。実施が実現すれば14年連続となる。

 このほか、マカオの財政準備資産総額は6000億マカオパタカ(約7.9兆円)超に上り、一部を活用して追加の経済支援対策を実施するプランを立案中とし、市民に安心するよう呼びかけた。ただし、支援策具体的な内容については、後日発表予定の来年度施政方針の中に盛り込むとのこと。

マカオ特別行政区による現金配布で市民に郵送される小切手のイメージ(資料)—本紙撮影

マカオ特別行政区による現金配布で市民に郵送される小切手のイメージ(資料)—本紙撮影

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