新型コロナでインバウンド旅客激減のマカオ、市民に約18万円分の現金と電子商品券配り消費促進

 昨今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が世界各地へ拡大しており、終息時期が見通せない状況が続いている。

 マカオは人口約67万人、面積約32平方キロという小さな街だが、世界遺産やカジノを核とした大型IR(統合型リゾート)に加え、国際イベントが数多く開催されるアジア有数の観光都市として知られ、インバウンド旅客数は年間3940万人超(2019年実績)にも上る。その約7割を占めるのが中国本土からの旅客だ。

 新型コロナの流行を受け、マカオ政府は1月後半以降、一連の春節祝賀イベントやMICEイベントの中止、世界遺産含む文化施設の一時休館、カジノ及びレジャー・娯楽施設の一時休業(カジノは2月5日から19日まで、レジャー・娯楽施設は同日から3月1日まで)といった観光都市としての魅力をあえて消すと同時に、中国本土及び他の高発生地区(現時点では韓国、イタリア、イラン)との往来を物理的に制限すること、マカオ住民に対しても全学校の休校(継続中)や政府窓口の一時休止(3月2日から限定的に解除)を含む不要不急の外出を控えさせる策などを講じることで、これまでのところ流行の食い止めに成功(詳細データは文末)している。

 入境制限を含む厳格な防疫対策が堅持される中、インバウンド旅客は激減したままの状態が続いており、消費も低迷している。これに対し、マカオ政府は市民に現金と電子商品券を配布するなどして消費を促す内需主導型の経済活性化を図る施策を打ち出した。

 マカオ政府はインフレ対策や富の還元を理由に2008年からマカオ居民(マカオ居留権保有者)に対する現金配布を毎年実施している。現金配布は例年7月から9月にかけて実施されるが、今年は新型コロナ経済対策の一環として、当初予定の7〜9月を4〜6月に前倒し実施することが決定。支給額は永久性居民(永久居留権保有者)が1万マカオパタカ(日本円換算:約14万円)、非永久性居民(臨時居留権保有者)が6000マカオパタカ(約8万円)。

 また、マカオ居民を対象に3000マカオパタカ(約4万円)分の電子商品券も配布される。3月5日夕方のマカオ政府新型コロナウイルス感染症対策センター定例記者会見で発表された実施概要によれば、4月下旬に配布され、有効期間は5〜7月の3ヶ月間。マカオで広く普及するICカード「マカオパス」の端末が設置された地元の飲食店、小売店、生活雑貨店等が対象で、消費額の上限は1日あたり300マカオパタカ(約4000円)までとのこと。

 マカオ政府経済財政庁の李偉農(レイ・ワイノン)長官は記者発表の中で、現金と電子商品券の配布を通じ、消費による域内経済活性化、それに伴う就業環境の安定を図る狙いがあるとし、「お金使って経済を回して」と呼びかけた。

 このほか、政府は3月から3ヶ月間の家庭用電気料金と水道料金の全額補助(上限なし)も発表済みで、この分が消費に回る可能性もあるだろう。

マカオ政府が新型コロナ経済対策で市民に配布予定の電子商品券の券面イメージ(マカオ政府経済財政長官事務所)

 政府発表資料によれば、実施にかかる予算は現金配布が約71億マカオパタカ(約950億円)、電子商品券配布が22億マカオパタカ(約300億円)、3ヶ月間の家庭用電気・水道料金の全額補助が3億マカオパタカ(約40億円)。ほかにも、減税や中小企業支援などの実施を発表しており、各種経済対策の総予算規模は約270億マカオパタカ(約3600億円)にも上る。

 マカオ政府の財政準備資産高は歳出の5年分超に達しており、新型コロナ経済対策として有効に活用する方針を示している。カジノ税という潤沢な財源を擁するマカオだが、しばらくの間はインバウンド旅客の激減がカジノ税収を直撃するとみられ、2020年会計年度(1〜12月)の財政収支は赤字となる見通し。

 本稿執筆時点(マカオ時間3月5日午後7時10分)のマカオにおける新型コロナウイルス感染確認者数は累計10人で、内訳は7人が武漢からの旅客、3人がマカオ人。このうち武漢からの旅客7人とマカオ人2人の計9人が治癒し退院済み。2月5日以降、現在まで30日連続で新規感染確認ゼロが続いている。

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