違法宿泊施設が犯罪の温床に―マカオ

警察当局が立法会公共行政事務推進委員会に提出した資料によると、近年違法宿泊施設の封鎖件数は増加の一途で、不法滞在や管理売春の拠点となるなど、犯罪の温床になっていることも明らかになった。今年(2014年)1〜4月に政府が封鎖した違法宿泊施設は49ユニットあり、このうち約6割にあたる29ユニットで53事案の刑事事件が発生していた。

8月8日付地元有力紙「澳門日報」が報じた。違法旅館はもともと格安料金の簡易宿泊施設との位置づけだったが、最近では犯罪の温床へと変質しており、看過できない状況となっている。立法会議員や市民から法改正による対策強化の声も上がっているが、政府は明確な回答をしておらず、関心を示しているとコメントするにとどまっている状況。

8月7日午前にマカオ立法会で開かれた公共行政事務推進委員会には宿泊施設行政を担当する旅遊局、警察部門の担当者が出席し、2010年に施行された禁止非法提供住宿法律(違法宿泊施設提供禁止法)の適用状況を委員らに説明。警察当局の提出した統計データによると、封鎖施設数は2010年に94ユニット、2011年93ユニット、2012年116ユニット、2013年149ユニットとなり、刑事事件の発生件数は2010年71件、2011年82件、2012年106件、2013年134件と増加傾向にある。2014年は4月までに43施設が封鎖対象となり、53件の刑事事件につながっている。

2013年の違法宿泊施設で発生した刑事事件134件には、不法入境12件、管理売春14件、麻薬・向精神薬関連12件が含まれていた。

公共行政事務推進委員会主席の陳明金立法会議員は違法宿泊は犯罪の温床になっているだけでなく、カジノ周辺から下環、黒沙環、タイパなどの住宅街にも広がっており、民政に与える影響も大きいと指摘。委員会では法改正による取り締まりの強化を政府に対して促していくとしている。現在、違法宿泊施設の管轄は旅遊局となるが、同局には犯罪捜査権がない。議員の間では旅遊局に捜査権を与える、もしくは警察部門に代替するなどの改正法案を提出し、政府に対応を迫る動きもみられる。

旅遊局の文綺華局長によると、違法宿泊施設は非マカオ籍の者が経営していることが多く、罰金の徴収に至っていないこと、違法宿泊施設と刑事事件の関係性などについて、処理すべき課題であるとの認識を示したが、法改正については社会の要求と更なる有効な取り締まりを実施するため、より詳細に検討する必要があるとの姿勢を示した。なお、これまで罰金の対象となった違法宿泊施設のうち、9割が罰金未納だったという。

合法宿泊施設への宿泊を呼びかけるチラシ(旅遊局ウェブサイトより)

合法宿泊施設への宿泊を呼びかけるチラシ(旅遊局ウェブサイトより)

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  マカオ政府統計・センサス局(DSEC)は4月26日、今年第一四半期(2024年1〜3月期)の雇用…
  2.  マカオの公共路線バスで4月25日午前0時から中国本土版のアリペイ、香港版のアリペイ、マカオ以外の…
  3.  近日、マカオを含む中国華南の珠江デルタ地域では大雨が続いている。  マカオ政府海事・水務局…
  4.  マカオ貿易投資促進局(IPIM)は4月24日、マカオにおけるMICE誘致状況のアップデートを明ら…
  5.  シンガポール発の国際ラグジュアリーホテルブランド「カペラ」がマカオ初進出することがわかった。カペ…

ピックアップ記事

  1.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  2.  マカオ国際空港を本拠地とするマカオ航空(NX)が福岡便の運航を(2024年)7月12日から再開す…
  3.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  4.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…
  5.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…

注目記事

  1.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  2.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
  3.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  4.  香港国際空港の制限エリア内にある「スカイピア」と港珠澳大橋マカオ側イミグレーション施設との間を港…
  5.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年5月号
(vol.131)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun