港珠澳大橋―珠江デルタ一体化のシンボル

「港珠澳大橋(英名:Hong Kong-Zhuhai-Macao Bridge)」は、その名の通り、香港、広東省の珠海、マカオの珠江デルタ東西三都市を結ぶ夢の架け橋だ。そんな夢のような話が実現するのはきっと遠い未来だろうと思われがちだが、実はそう遠くない未来、2016年にも実現される予定なのだ。すでに人工島の埋め立て造成が進んでおり、香港とマカオを結ぶフェリーから望むことができる。

珠江河口部を東西に横断するルート (c) 香港路政署

香港とマカオの間を結ぶ海上橋構想は1980年代からあったというが、現実味を帯びたのは香港とマカオがそれぞれ英国とポルトガルから中国へ返還されて以降の2000年代に入ってから。広東省、香港、マカオ(現地では「粤港澳」と呼ばれる)の一体化が国策として語られるようになったのがきっかけだ。

香港は北で深圳市と陸続きで隣接する位置にあるため、早くから鉄道や高速道路網で深圳、東莞、広州へとつながる珠江デルタ東部ルートが確立していた。しかし、香港から珠江を挟んで西側にある珠海、中山といった西部ルートへの陸路アクセスは一旦北上した上で珠江を越え、さらにそこから南下する必要があり、輸送効率が悪かった。このことから、珠江東側と比べ、西側への工場誘致が遅れた経緯がある。また、香港と観光都市マカオとの間も高速フェリーが主な交通手段となっており、陸上輸送による大量輸送が長年の念願とされてきた。華南地区最大の国際都市香港を中心とした珠江デルタ全体の持続的発展の促進、返還により中国へ復帰した香港、マカオと広東省の一体化という二大テーマが見事にマッチした結果、港珠澳大橋プロジェクトが動き出すこととなった。

次のページ:

1

2 3

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  マカオの公共路線バスで4月25日午前0時から中国本土版のアリペイ、香港版のアリペイ、マカオ以外の…
  2.  近日、マカオを含む中国華南の珠江デルタ地域では大雨が続いている。  マカオ政府海事・水務局…
  3.  マカオ貿易投資促進局(IPIM)は4月24日、マカオにおけるMICE誘致状況のアップデートを明ら…
  4.  シンガポール発の国際ラグジュアリーホテルブランド「カペラ」がマカオ初進出することがわかった。カペ…
  5.  アフターコロナ初年となったマカオの昨年(2023年)通期のカジノ売上(粗収益、Gross Gam…

ピックアップ記事

  1.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…
  2.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…
  3.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  4.  マカオ国際空港を本拠地とするマカオ航空(NX)が福岡便の運航を(2024年)7月12日から再開す…
  5.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…

注目記事

  1.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  2.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
  3.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
  4.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  5.  香港国際空港の制限エリア内にある「スカイピア」と港珠澳大橋マカオ側イミグレーション施設との間を港…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年5月号
(vol.131)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun