大型IRパリジャンマカオ、再検査でも基準値超えるレジオネラ菌検出=在郷軍人病患者が潜伏期間中に滞在

今年(2017年)4月21日、香港の在郷軍人病(退役軍人病、レジオネラ肺炎)患者3人が発病前の潜伏期間中にマカオの大型IR(統合型リゾート)パリジャンマカオに滞在、宿泊していたことが明らかとなった。患者は66〜84歳の男性で、今年1〜3月にかけて発病したという。

マカオ政府衛生局は、同日から旅遊局の協力を得てパリジャンマカオにおける一連の調査を展開し、同施設に対して予防措置を講じるよう命じた。具体的には、パリジャンマカオの噴水、スパプール、スイミングプール、給水システム等の公共用水域の保守状況調査とサンプル検査を実施。噴水の一時停止及びサウナプール、スイミングプール、給水システムの徹底洗浄と消毒を要求した。

同局は4月末から5月頭にかけてパリジャンマカオの内で採取した78の水のサンプルの検査を実施。このうち、ホテル客室、ロビーのトイレ、スイミングプールのシャワールームなど複数箇所の蛇口からレジオネラ菌を検出し、10のサンプルで基準値(10CFU/ml)を超過していた。また、塩素消毒を行う二次給水システムが正常に作動おらず、塩素不足となっていたことも判明。運営側に対し、二次給水システムの改善及びリゾート内各所の出水口パーツの清掃を求めた。なお、プール、スパ、噴水からはレジオネラ菌は検出されなかった。

その後、改善措置が講じられたことを受け、5月8日から6月1日にかけて再検査を実施。6月19日に結果が公表された。153の水のサンプルのうち、依然としてレジオネラ菌が検出されたが、陽性比率は前回と比較して大幅に低下していた。ただし、初回検査の対象とならなかったショッピングモールのトイレ及び客室の洗面台の蛇口の計3つのサンプルで基準値を超過していた。衛生局は、あらためてレジオネラ菌に対して有効な消毒措置を実施するよう運営会社側に求め、再々検査を実施する方針。なお、運営会社はシンガポールの専門業者に委託し、全面的な給水システムに関する評価の実施とより効果的な消毒方法の模索しているとのこと。

在郷軍人病はレジオネラ菌が引き起こす伝染病の一種で、菌を含む水が空調などを通じて飛散することによる空気感染すると考えられている。レジオネラ菌は多様な環境下に存在するが、20〜45℃の温水で成長しやすく、水のタンク、スパプール、噴水、家庭で用いられる医療用吸入器などから見つかることも多いとのこと。症状としては、発熱、空咳、呼吸困難、倦怠感、頭痛、筋肉痛、腹痛、下痢などが挙げられ、抗生物質による治療が可能とのこと。マカオにおける退役軍人病の感染例は、直近10年間で2010年に確認された1例のみという。

パリジャンマカオは米ラスベガスサンズグループのサンズチャイナ社が運営するフランス・パリがテーマの大型IRで、2016年9月にオープンしたばかり。2分の1スケール(約160メートル)のエッフェル塔のレプリカ、供給客室数およそ3000室のホテル、カジノ、ショッピングモール、コンベンション施設、シアター、スパ、ウォーターパークなどで構成される。

パリジャンマカオ外観(資料)=マカオ・コタイ地区、2016年6月-本紙撮影

パリジャンマカオ外観(資料)=マカオ・コタイ地区、2016年6月-本紙撮影

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  マカオ政府統計・センサス局(DSEC)は4月26日、今年第一四半期(2024年1〜3月期)の雇用…
  2.  マカオの公共路線バスで4月25日午前0時から中国本土版のアリペイ、香港版のアリペイ、マカオ以外の…
  3.  近日、マカオを含む中国華南の珠江デルタ地域では大雨が続いている。  マカオ政府海事・水務局…
  4.  マカオ貿易投資促進局(IPIM)は4月24日、マカオにおけるMICE誘致状況のアップデートを明ら…
  5.  シンガポール発の国際ラグジュアリーホテルブランド「カペラ」がマカオ初進出することがわかった。カペ…

ピックアップ記事

  1.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  2.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…
  3.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  4.  マカオ国際空港を本拠地とするマカオ航空(NX)が福岡便の運航を(2024年)7月12日から再開す…
  5.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…

注目記事

  1.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  2.  香港国際空港の制限エリア内にある「スカイピア」と港珠澳大橋マカオ側イミグレーション施設との間を港…
  3.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
  4.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  5.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年5月号
(vol.131)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun