マカオ政府とドッグレース運営会社のコンセッションが満期迎える…87年の歴史に幕=レース犬533匹遺棄が問題に

マカオは豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノ施設ばかりが目立つが、実はその他のギャンブルも存在し、政府とコンセッション(経営権契約)を結ぶ民間事業者によって運営されている。

そのうちのひとつ、マカオ逸園カニドローム社が運営するドッグレースについて、政府との契約期限が7月20日に満期を迎えた。契約最終日には、マカオ政府財政局と運営会社の間で資産の引き渡し手続き、さらには動物行政を管轄する民政総署(IACM)による犬舎施設及びレース犬の健康状態の確認などが行われ、21日午前0時になってマカオ政府がドッグレース場の施設を接収し、ゲートを封鎖した。

マカオのドッグレースは1931年8月にスタート。1936年に台風による被災で約20年間の中断後、マカオ逸園カニドローム社が引き継ぎ、1961年9月に再開。アジア太平洋地域で合法ギャンブルとしてのドッグレースが唯一存続していたマカオだったが、すでにレースは6月30日をもって終了しており、中断期間を含めて87年という長い歴史に幕を降ろした。

かつてマカオのギャンブルの花形として栄えたドッグレースだが、近年はファンの高齢化、売上の減少、施設の老朽化が進み、さらには動物愛護団体から虐待だとする指摘を受けるなど、存続が厳しい状況が続いていた。運営会社は海外で開催されるドッグレースを中継する方式へ変更する計画を作成し、コンセッションの延長を申請したものの、政府は税収、ドッグレース場周辺エリアへの経済効果、海外からの旅客の誘致につながらないことなどを挙げ、否決の判断を下していた。

運営会社とのコンセッションが満期を迎えたことを受けてマカオ政府がドッグレース場を接収=2018年7月21日(写真:GCS)

運営会社とのコンセッションが満期を迎えたことを受けてマカオ政府がドッグレース場を接収=2018年7月21日(写真:GCS)

なお、政府はコンセッション満期を迎えるにあたり、2年前からレース犬の妥当な処理をするよう再三に渡って運営会社に要請してきたが、21日午前0時に政府が施設を接収した時点で、犬舎に533匹が遺棄されていたとのこと。IACMは地元の動物愛護団体へ協力を依頼し、10日間程度は犬たちの世話をするメドがついたとしたが、運営会社に対して動物愛護法に基づき責任を追求する方針を示した。法律では、7日以内に犬を引き取らない場合、1匹あたり2万〜10万パタカ(日本円換算:約28万〜140万円)の罰金を科すと規定されている。一方、運営会社側は遺棄ではなく法律に基づく管理責任のIACMへの移行であるとの見解を示しており、今後の争点となりそうだ。

また、職を失った従業員の行方については、運営会社が労働関連法の規定に基づく補償金を支払うほか、関連会社にあたるカジノリゾート運営大手のSJMホールディングス系のIR(統合型リゾート)、競馬を運営するマカオジョッキークラブ、スポーツくじを運営するマカオスロット社への転職斡旋を行うことで、生計に影響が出ないようにするとしている。

レース犬の健康状態を確認するIACMの職員=2018年7月20日(写真:IACM)

レース犬の健康状態を確認するIACMの職員=2018年7月20日(写真:IACM)

関連記事

Print Friendly, PDF & Email

最近の記事

  1.  マカオ政府統計・センサス局(DSEC)は4月26日、今年第一四半期(2024年1〜3月期)の雇用…
  2.  マカオの公共路線バスで4月25日午前0時から中国本土版のアリペイ、香港版のアリペイ、マカオ以外の…
  3.  近日、マカオを含む中国華南の珠江デルタ地域では大雨が続いている。  マカオ政府海事・水務局…
  4.  マカオ貿易投資促進局(IPIM)は4月24日、マカオにおけるMICE誘致状況のアップデートを明ら…
  5.  シンガポール発の国際ラグジュアリーホテルブランド「カペラ」がマカオ初進出することがわかった。カペ…

ピックアップ記事

  1.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  2.  マカオの新交通システム「マカオLRT(澳門輕軌)」タイパ線の媽閣駅延伸部が12月8日に開業。マカ…
  3.  マカオ・コタイ地区にある大型IR(統合型リゾート)「スタジオ・シティ(新濠影滙)」運営会社は1月…
  4.  マカオ国際空港を本拠地とするマカオ航空(NX)が福岡便の運航を(2024年)7月12日から再開す…
  5.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…

注目記事

  1.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  2.  香港国際空港の制限エリア内にある「スカイピア」と港珠澳大橋マカオ側イミグレーション施設との間を港…
  3.  マカオは面積約30平方キロ、人口約68万人の小さな街だが、コロナ前には年間4000万人近いインバ…
  4.  日本政府は8月22日、早ければ同月24日にも東京電力福島第一原発におけるALPS処理水(以下、処…
  5.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年5月号
(vol.131)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun